2006 Fiscal Year Annual Research Report
腫瘍血管へ免疫細胞動員活性を誘導する生体プログラムの賦活化と抗腫瘍免疫監視の強化
Project/Area Number |
18015033
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
田中 稔之 大阪大学, 医学系研究科, 助教授 (30217054)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
早坂 晴子 大阪大学, 医学系研究科, 助手 (70379246)
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Keywords | 腫瘍血管 / 血管内皮細胞 / 免疫細胞動員 / ES細胞 / 分化誘導 / 遺伝子発現 / リンパ球 / MAdCAM-1 |
Research Abstract |
【目的】腫瘍血管内皮細胞に適切な免疫細胞動員シグナルを誘導できれば、抗腫瘍エフェクター細胞の選択的ながん組織への動員が可能になる。本年度は発生過程で二次リンパ組織に特異的に誘導される高い免疫細胞動員活性をもつ特異な小静脈(高内皮細静脈:HEV)の誘導プログラムの解明とその人為的な制御を目的として解析を進め、以下の成果を得た。【結果と考察】1.腫瘍血管へ免疫細胞動員活性を誘導する内因性プログラムの解析:血管系への免疫細胞動員活性の誘導機構を明らかにするために、ES細胞を用いたin vitro分化誘導系の樹立を試みた。その結果、ES細胞からFlk-1^+中胚葉系細胞を分取したのち、リンパ組織由来ストロマ細胞と共培養すると、一部の細胞にVE-cadherinとともに発生過程のHEVに発現しリンパ球動員に重要な役割をはたすMAdCAM-1が誘導できることが示された。また、MAdCAM-1^+HEVの機能的な成熟は胎生後期から新生仔期に急速に進行する事に着目してcDNAアレイ解析を行い、新生仔期のHEV内皮細胞に高い発現を示す遺伝子群を特定した。2.血管系を介した免疫細胞動員を促進する新しい細胞接着制御系の同定:血管系へ免疫細胞動員活性を誘導するシグナル伝達系の新しい標的分子の特定を目的として、血管内皮細胞とリンパ球の相互作用を制御する細胞接着分子を探索し、ムチンドメインとIgドメインの両者をもつシアロムチンnepmucinを新たに同定した。nepmucinはムチンドメインへL-セレクチン結合性糖鎖修飾を受けてリンパ球ローリングを制御するとともに、Igドメインを介してICAM-1と協調しケモカイン依存的なずり応力抵抗性のリンパ球接着を促進することを初めて明らかにした。またnepmucinはIgドメインを介して特定の造血系腫瘍を接着することから、がんの血行性転移の制御にも関与する可能性が示唆された。
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