2006 Fiscal Year Annual Research Report
脂質代謝制御系を標的とした難治がん選択的治療法の開発
Project/Area Number |
18015048
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Research Institution | Japanese Foundation For Cancer Research |
Principal Investigator |
馬島 哲夫 (財)癌研究会, 癌化学療法センター分子生物治療研究部, 研究員 (30311228)
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Keywords | 脂質代謝 / 分子標的治療 / アポトーシス / 癌 |
Research Abstract |
脂肪酸合成経路は、癌の生存や増殖に関与し、新しい癌分子標的と考えられている。申請者は、p53変異癌選択的に細胞死を誘導する化合物として、Acyl-CoA synthetase(ACS)阻害剤を同定した。そこで、ACSによるp53変異癌細胞の生存支持機構やその阻害による細胞死誘導機構を明らかにし、また新たなACS阻害剤の検索を進めたいと考えている。本年度は、まず、ACS各種アイソザイムの癌生存における役割を検討するため、ACS 1,4,5全長遺伝子をクロー二ングし、さらにレトロウイルスベクターを用いて、その安定発現細胞樹立を試みた。その結果、ACS 1,4の安定過剰発現は困難であったが、癌で発現亢進の認められるACS5の過剰発現株を複数の癌細胞で取得に成功した。また、Baxによるミトコンドリアからのチトクロムc放出依存的アポトーシス活性化系を構築し、ACS阻害がこれを増強すること、およびACS5発現がこれを抑制することを見出した。これはミトコンドリアのリン脂質カルジオリピンの動態変化にも相関したが、ACS阻害によるアポトーシス経路促進は、チトクロムc放出の下流の機構の活性化をも介していることが示唆された。また、ACS5を過剰発現した癌細胞が、種々の化学療法剤や癌の微小環境ストレスに対して抵抗性を示すかを調べたところ、ACS5がCPTや5FUなどの抗癌剤耐性に関与することがわかった。興味深いことに、癌の微小環境ストレスの中でも低pHストレスに対して、ACS5発現が耐性を付与することが明らかになった。これらよりACS5は癌の生存に積極的に関わると考えられた。一方、 ACS阻害化合物をスクリーニングするため、high throughputに行なうことが可能なACS assay系を構築した。現在、このassay系を用いて、化合物検索を開始しており、今後さらに進めていく予定である。
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