Research Abstract |
胃がん患者の生存率を大幅に改善するためには腹膜再発を予防することが最も重要である。腹膜再発予防のための新しい診断・治療戦略の構築をめざして今年度は以下の諸点を明らかにした。1)腹腔洗浄液中CEA qRT-PCR法陽性症例36例に対し,経口抗がん剤(TS-1)による治療を行い,2年間のfollow upを行う臨床第2相試験を当センター消化器外科で実施した。結果は、qRT-PCR法陽性の治療群では無治療群に比し腹膜再発の減少が境界有意で認められているが,生存に関して有意差は認められず,TS-1単剤では腹膜再発阻止に不十分である可能性が示唆された。一方,名古屋大学病態制御外科と共同でパクリタキセル腹腔内化学療法の第1相試験を実施し,腹水抑制効果を認め,腹膜転移に対する有効な治療法になりうる可能性を示唆した。2)遺伝子診断法の診断精度の改善をめざして,Microarrayを用いた網羅的解析を行い,CEAを補完でき,これまでに報告のない新規遺伝子マーカーを5個同定した。さらに1000個程度の遺伝子を組み合わせて教師あり法(学習機械システム,SVM)により腹膜転移の有無を正確に予測できる診断用DNAチップの開発のため遺伝子の絞り込みを進め,特許出願した。3)新規治療法の開発では,パクリタキセル→TS-1の逐次投与法がTS-1単独に比べ有意に腹膜転移抑制効果が高いことをGFP導入胃癌ヌードマウスモデルで明らかにし,qRT-PCR法陽性患者に対する新規治療法としての可能性を示唆した。またシスプラチン系抗がん剤を封入したマンノース被覆リポゾームを用いて,操作の煩雑な磁性微粒子を用いた温熱ストレスによるリリース操作をすることなしに初発の腹膜転移巣である大網乳斑に特異的に抗がん剤を送達させ,一定の抗腫瘍効果を得ることに成功した。
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