2006 Fiscal Year Annual Research Report
細胞が非対称性を獲得する原理の分子レベルおよび数理・数式レベルでのモデル構築
Project/Area Number |
18016020
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Research Institution | Nara Institute of Science and Technology |
Principal Investigator |
稲垣 直之 奈良先端科学技術大学院大学, バイオサイエンス研究科, 助教授 (20223216)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
島田 忠之 奈良先端科学技術大学院大学, バイオサイエンス研究科, 助手 (80379552)
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Keywords | 軸索 / 樹状突起 / 極性 / Shootin1 / 形態形成 / 対称性破壊 / 神経細胞 / システムバイオロジー |
Research Abstract |
組織や細胞は発生・分化に伴って非対称性(極性)を獲得して固有の形態を形づくる。生体がどの様にして非対称性を獲得するかという問題は重要な研究テーマである。我々は、これまでの大規模なプロテオーム解析により、神経極性形成タンパク質Shootin1を見出した。本研究では、Shootin1の実験計測データを条件とした自立的に極性を獲得することができるモデルニューロンの構築を行う。そして、数理解析の結果を実験科学にフィードバックして研究を推進するアプローチを通して、細胞が非対称性を獲得するしくみの原理を分子レベルおよび数理・数式レベルで解き明かすことを目指す。 本年度は、神経極性形成に伴うShootin1の細胞内挙動を計測し、それをもとに基本モデルニューロンを構築した。このモデルニューロンは、培養ニューロンと同様に自立的に極性を獲得するのみならず、その軸索形成曲線は培養ニューロンと同様に2相性の曲線を描いた。このことは、神経細胞の非対称性の獲得のためにShootin1が中心的な働きを担っていることを示唆するのみならず、Shootin1の観測データが神経細胞の非対称性の獲得ための基本条件を構築しうることを示唆している。 また、基本モデルおよび培養ニューロンの3種類の実験パラメータに変動を与えて両ニューロンの極性形成過程を比較した結果、すべての場合において培養ニューロンと基本モデルニューロンが一致した挙動を示した。このことから、本年度に構築した基本モデルニューロンが概ね正しく神経極性形成を再現することができると考えられた。 今後の課題として、実験結果から考えられた「長い突起ほどShootin1が突起に濃縮しやすい」という仮説を実験で証明することが今回得られた基本モデルを検証する上で重要と考えている。また、計測データの定量性をさらに向上させてモデルに組み入れる。以上の実験と数理解析を積み重ね、基本モデルの検証と修正を行うことにより、より優れたモデルニューロンの構築を目指す。
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Research Products
(6 results)