2007 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
18016031
|
Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
上田 泰己 The Institute of Physical and Chemical Research, システムバイオロジー研究チーム, チームリーダー (20373277)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
鵜飼 英樹 独立行政法人理化学研究所, システムバイオロジー研究チーム, 研究員 (70391878)
|
Keywords | 体内時計 / シンギュラリティー現象 / 光による定量的な制御 / メラノプシン / 脱同調 |
Research Abstract |
多細胞生物を多細胞生物たらしめている細胞間相互作用を担う動的で複雑なシステムを体系的・効率的に同定・解析していく手法・研究戦略の確立は重要であるが、いまだ発展途上である。我々は、哺乳類の概日時計における細胞間相互作用をモデル系とし、インシリコ・インビボにおいて細胞間相互作用の遺伝子ネットワークを構成することで予測されうるメカニズムの再構成的証明を行い、細胞間相互作用の研究戦略のモデルケースを提供する。 概日時計の細胞間同調を観測するためには、非同期状態の細胞間(概日振動の位相が異なる細胞間)の相互作用を観察することが必要である。しかし、培養細胞の概日振動の位相は、細胞内cAMP濃度上昇の誘導や、培養液の交換、温度の変化等、培養環境のわずかな変化によって速やかに同期してしまい、実験的に非同期状態を自在に誘導することは非常に困難である。そこで、我々はまず刺激の強度・時間等を自在に調節可能な「光刺激」の利用に着目し、光受容体を培養細胞に発現させ、培養液の温度に影響を与えない程度の光を照射することで光受容体依存的に培養細胞の概日振動の位相を変化させることが可能な系を構築した。この系を用いて照射条件を詳細に検討することにより、同期振動している培養細胞集団を任意に非同期化させることが可能な実験系の構築に成功した。この手法を用いて、細胞に人為的に非同期状態を誘導することにより、その後同期した概日振動が自然に回復してくる過程を一細胞発光ダイナミクスのリアルタイム測定系を用いて観察することが可能となり、その性質を詳細に解析することが可能となる。なお、この成果を基に、30年以上もの間未解決であった「シンギュラリティー現象」と呼ばれる概日時計が停止する現象が、時計細胞同士の脱同調による事を実験及び数理モデルを用いて立証し、論文として発表した。(Ukai, et. al. Nat. Cell Biol.2007)。
|