2006 Fiscal Year Annual Research Report
細胞性粘菌を用いた多細胞体制成立のゲノム基盤に関する研究
Project/Area Number |
18017003
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
漆原 秀子 筑波大学, 大学院生命環境科学研究科, 教授 (00150087)
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Keywords | 細胞性粘菌 / 多細胞体形成 / 細胞分化 / ゲノム解析 / 遺伝子発現 / シグナル伝達 / 遺伝子ファミリー |
Research Abstract |
細胞性粘菌の子実体形成は胞子と柄細胞のみを生じる最も単純な細胞分化のシステムで、発生メカニズムの解析に適した実験系とされてきた。しかし、細胞性粘菌の中でもAcytostelium属の子実体では柄は非細胞性で、全ての細胞が胞子となる。集合して多細胞になりながら細胞分化が見られない細胞性粘菌の存在は非常に興味深い。そこで、Acytosteliumの株と種々の情報が蓄積されているDictyostelium discoideumとの比較ゲノム解析によって、多細胞体制の本質的な意義である生殖細胞と体細胞への役割が可能になった進化の道筋を推察することを目標として研究を行った。これまでのところ、Acytosteliumに関する分子生物学的、遺伝情報額的解析はほぼ皆無である。まず、実験系の確立を行った。国立科学博物館の萩原博士より供与された未同定株とストックセンターから入手した計5種の株のうち、Acytostelium subglobosumが培養と子実体形成の点で最も扱いやすいと判断されたので、この株を以降の研究に用いることとした。ゲノム解析に先立って大まかな情報を得るために、SalI断片によるゲノムライブラリーを作製し、ランダムに選んだ90クローンについてDNA塩基配列を決定した。得られた配列を解析したところ、A.subglobosumゲノムのGC含率は約56%とD.discoideumの22.4%に比べてかなり高いことがわかった。これを反映して、およそのコドン使用頻度にも両種で大きな違いがあった。また、遺伝子密度はかなり高く、効率的な遺伝子解析が行えるものと期待される。現在、国立遺伝学研究所との共同研究でショットガン・シークエンシング法によるゲノム配列決定を進めている。A.subglobosumのゲノム解読を終了した後はD.discoideumで明らかにされている柄細胞形成に関わる遺伝子群のオルソログ遺伝子を抽出し、構造と機能の解析を通して多細胞体性の進化に関わったと考えられる遺伝子機能の変化に関する知見を得る予定である。
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Research Products
(5 results)