Research Abstract |
本年度の研究では,当初の予定通り,以下の項目を実施した。 (A)タンパク質配列クラスタリングと系統プロファイリングの方法の確立とデータ公開 多種ゲノムにコードされる全タンパク質の総当たりBLASTPを行い,その結果を独自ソフトGclustを用いてクラスタリングし,系統プロファイル検索に適した相同グループを作る方法を確立した。平成17年度に完成したGclustソフトウェアバージョン3.5.3を公開するとともに,相同グループのデータをGclustサーバーとして公開した。Gclustサーバーでは,系統プロファイルを用いた相同グループの検索が可能になり,目的別に準備されたさまざまな相同グループデータに基づいて,系統特異的保存タンパク質の推定ができるようになった。 (B)共生由来の色素体タンパク質等の推定 CZ36データセットを用いて,シアノバクテリアと真核光合成生物に共通に存在する相同グループを推定した。14種のシアノバクテリア中7種以上とシロイヌナズナ,緑藻,紅藻,珪藻に保存され,光合成をしない生物19種の過半数に存在しない相同タンパク質グループとして,170を同定した。このうち,既知の葉緑体機能に関わるものを除く45が機能未同定であった。このほか,共生根粒菌に共通な相同グループとして175個を推定した。そのうち92個が未同定であった。 (C)実験的検証 旧バージョンのGclustに基づいて推定された9種のシアノバクテリアとシロイヌナズナと紅藻に共通に含まれる37個の相同グループについて,遺伝子の発現解析,GFPを用いたタンパク質の局在観察を行い,これらのほとんどが共生体由来の色素体タンパク質であることを証明した。また,シアノバクテリアのホモログの破壊株を作ったところ,半数が光合成機能に異常をもつことがわかった。このほか,比較ゲノムに基づく,紅藻の脂質合成系の解析,緑色植物系統の解析,色素体の起源の推定などをおこなった。
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