2006 Fiscal Year Annual Research Report
神経生理学的手法と神経解剖学的手法を用いた認知と運動の統合過程の解析
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18019032
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Research Institution | Tamagawa University |
Principal Investigator |
星 英司 玉川大学, 学術研究所, 助教授 (50407681)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
射場 美智代 玉川大学, 学術研究所, 講師 (00270695)
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Keywords | 到達運動 / 前頭葉 / 運動前野 / 一次運動野 / 前頭前野 / 認知 / 運動 / 階層構造 |
Research Abstract |
コンピューターシステムを構築して、被験体に行動課題を学習させた。この行動課題では、提示された視覚情報に基づいて、標的の情報を選択し、到達運動を実行することが要求された。従って、視覚情報の認知、それに基づく動作内容の選択、これらの過程に続く運動の準備ならびに実行の過程を詳細に検討することが可能となった。行動課題を習得後、課題遂行中に運動前野と一次運動野より細胞活動の記録を行った。その結果、運動前野に大変興味深い細胞活動が見出された。視覚情報の提示に対して数100msという短潜時で応答したが、視覚内容ではなく、指示された動作内容を表現していた。このほかに、運動決定直後から実際の運動を遂行するまでの持続性の活動も見出され、この活動は動作の指示内容から実際の動作への変換過程を反映していた。一次運動野にはこういった活動は極めて少なく、動作遂行時に実際の動作を反映するものが大多数を占めていた。これらの結果は、前頭葉内の階層構造という観点からみて重要な示唆を与える。まず、運動前野に視覚情報自体を反映するものが殆どなかったという結果は、運動前野は選択された動作内容の情報を受け取るが、動作内容の選択過程には関与していないことを示唆している。動作内容が実際の運動に変換される過程が反映されていたという結果と併せて考えると、運動前野は選択された動作内容を受け取り、これを実際の運動に変換する過程に関与しているとみなされる。これは、運動前野が認知と運動のインターフェースとして機能している可能性を示唆している。一方で、一次運動野はこの過程への関与は殆どなく、特定された運動を遂行する際に主要な役割を果たしているとみなされる。以上の結果は、運動前野と一次運動野間には大きな機能的差異があり、運動前野から一次運動野へ運動情報の流れがあること、即ち階層構造があることを示唆する。
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