2006 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
18019045
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
肥後 範行 独立行政法人産業技術総合研究所, 脳神経情報研究部門, 研究員 (80357839)
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Keywords | 脳損傷 / リハビリテーション / 指運動 / 精密把握 / 病体モデル / 霊長類 / 機能回復 / 可塑性 |
Research Abstract |
脳に損傷を受けると、失われた脳領域の機能の障害を受けるが、リハビリテーション訓練を行うことにより、失われた機能が代償されることがある。しかし現在においては、リハビリテーション訓練が脳内の神経回路にどのような効果をもたらし、機能代償を促進するのかは明らかになっていない。脳損傷後の訓練が脳内神経回路に及ぼす効果を明らかにすることは基礎研究として興味深いのみならず、臨床にも有益な情報をもたらすものであると考えられる。本年度はニホンザルをモデル動物として用い、第一次運動野損傷後の運動機能回復を行動学的に解析した。皮質内微小刺激法により第一次運動野の機能地図をマッピングした後、指運動の支配領域にイボテン酸による脳損傷を作成した。イボテン酸の注入直後から指運動の完全麻痺が生じたが、その後運動機能は徐々に回復した。第一次運動野損傷後に積極的な運動訓練を行った個体群(n=3)と運動訓練を行わなかった個体群(n=3)ともに、第一次運動野指領域の損傷直後は指運動の完全麻痺が生じたが、その後運動機能は徐々に回復した。損傷後2-3週間で両群ともに指の動きが多く見られるようになったが、拇指と示指の独立した動きは不充分であった。この時期に円筒状の孔から小球状の物体を把握する課題を行わせたところ、両群ともに損傷前よりも課題成績(成功した把握の割合)は劣るものの、把握は可能であった。ただ損傷前は拇指と示指の対向による指先での把握(精密把握)が見られたのに対して、この時期には示指の屈曲にともなって拇指の屈曲が生じるため、拇指と示指の対向が見られず、拇指の背側面で把持する代償的な把握が多く見られた。その後1ヶ月の間に訓練群では代償的な把握の割合が減少し、精密把握の割合が増加するのに対し、非訓練群では代償的な把握の割合が高いまま推移し、損傷後6カ月の時点においても精密把握がほとんど見られなかった。以上のことから、第一次運動野損傷後の運動機能回復過程には訓練を必要とする要素と訓練を必要としない要素の両方があり、特に精密把握の回復に関しては損傷後の訓練が必要であると考えられる。現在、損傷後の機能回復の基盤となる神経回路の変化を明らかにするために、回復途中または回復直後の脳組織を採取し(現在11頭分のサンプルを採取)、神経回路変化に関わる分子の発現を解析中である。
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Research Products
(1 results)