2006 Fiscal Year Annual Research Report
神経回路と情報処理の統合的解析による、側頭葉における連合学習の解明
Project/Area Number |
18019047
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
菅生 康子 独立行政法人産業技術総合研究所, 脳神経情報研究部門, 研究員 (40357257)
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Keywords | 実験系心理学 / 脳・神経 / 神経科学 |
Research Abstract |
脳は学習することができるという、効率的で有利な機能を持っている。例えば報酬スケジュールを視覚刺激で明示すると、サルは視覚刺激とスケジュールとの関係を速やかに学習する。破壊実験から、視覚刺激と報酬スケジュールの連合学習には、側頭連合野(嗅周囲/傍嗅皮質)が必須であり、さらにドーパミンD2受容体が関与することが示されている(Liu et al.,2000,2004)。本研究課題では、1)組織化学的手法を用いて側頭皮質を中心とした視覚刺激-報酬スケジュールの連合学習の神経回路を、そして2)生理学的手法を用いて学習に関わる情報処理を明らかにすることを目的とする。本年度は、霊長類の側頭皮質において、ドーパミン受容体の分布およびそれらを発現するニューロンの種類について明らかになっていない現状を鑑み、連合学習に関わる神経回路を調べる第1段階として、サルの側頭皮質でのドーパミンD1およびD2受容体の分布を、免疫組織化学的手法で調べた。傍嗅皮質ではスケジュール選択的なニューロン応答が観察でき、TE野では視覚刺激選択的なニューロン応答しか観察できないことから(Liu and Richmond,2000)、嗅周囲/傍嗅皮質とTE野でドーパミン受容体の分布に違いがあることが予測された。実験の結果、抗D1受容体抗体と抗D2受容体抗体のシグナルを、下側頭皮質のII-VI層で主に錐体細胞で観察した。発現の強度に、D1受容体とD2受容体で違いが見られた。D2受容体の発現強度は、嗅周囲/傍嗅皮質のほうがTE野に比べて有意に高い傾向があった。それに対し、D1受容体の発現強度には有意な差がなかった。D1受容体とD2受容体を発現する抑制性細胞の割合も、嗅周囲/傍嗅皮質とTE野で差はみられなかった。さらに、D1受容体とD2受容体を共発現している細胞の割合についても嗅周囲/傍嗅皮質とTE野で有意な差はなく、大多数の細胞が共発現していることを明らかにした。これらの結果は、嗅周囲/傍嗅皮質とTE野でD2受容体の分布のみに差があり、それが嗅周囲/傍嗅皮質とTE野との機能の差に繋がる物質的基盤となっている可能性を示唆する。
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Research Products
(1 results)