2006 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
18020005
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
筒井 健一郎 東北大学, 大学院生命科学研究科, 助教授 (90396466)
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Keywords | サル / 連合野 / 単一ニューロン活動 / 機能的MRI |
Research Abstract |
動物は、経験を通して刺激や反応とその結果の関係(随伴性)を学習して行動を変容させることによって(強化学習)、環境に適応している。霊長類をはじめとする高等動物は、そのような学習能力に加えて、経験したことの無い新奇刺激について、それがどのような結果をもたらすのか、あるいは、それに対してどのように反応したらいいのかを、過去の経験や知識に基づいて予測・推論する能力を持っていると考えられている。本研究の目的は、さまざまな推論の形態のうち、もっとも基本的なもののうちひとつであると考えられる、カテゴリを基にした帰納的推論(類推)(あるカテゴリの事例がある特性を持っていると分かったとき、同じカテゴリのほかの事例も同じ特性を持っていると類推する思考過程)が、脳のどこでどのように行われているかを明らかにすることである。研究計画一年目である本年度は、まず、カテゴリを基にした推論を要求するグループ逆転課題を考案して3頭のサルに訓練した。試行の基本的デザインは、条件刺激(抽象図形)の後に無条件刺激(ジュースまたは食塩水)を与えるパブロフ型条件付け課題である。8個の抽象図形によって構成される刺激セットを作成し、セット中のすべての刺激が8試行で1回ずつ使われるように、擬似ランダム系列を用いて各試行で呈示する刺激を決めた。あるセッション(通常48〜96試行から成る)では、8個の刺激のうち半数(サブセットA)の刺激のいずれかが呈示されるとその後にジュースを、残り(サブセットB)の刺激のいずれかが呈示されるとその後に食塩水を与え、次のセッションではその関係を逆転させて、サブセットAの刺激の後には食塩水を、サブセットBの刺激の後にはジュースを与えるということを繰り返した(反復逆転)。この課題を、3つの刺激セットを交代で用いながらオーバートレーニングをした後に、新奇刺激セットを導入する実験を行ったところ、次のような結果が得られた。新奇刺激を導入したセッションでは、各刺激について2〜3試行経験した後に、ほぼ100%の正解率で課題を行うことが出来るようになった。次のセッションへの移行(逆転)においては、逆転後の2試行目から正しく反応でき、その後の繰り返し逆転でも同様の結果が得られた。すなわち、サルは、ただひとつの刺激について、それまでのジュースに代わって食塩水が与えられたことを経験すると、同じカテゴリの残りの3刺激についても同様のことがおこるとともに、別のカテゴリの4刺激について、それまでの食塩水に代わってジュースが与えられることを予測できたのである。これらの結果は、サルが、等価性に基づいた刺激のカテゴリ化が行えること、また、そのカテゴリに基づいて帰納的推論が出来ることを示している。
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Research Products
(3 results)