2006 Fiscal Year Annual Research Report
桃体機能、情動の制御に関わる新規神経ペプチドの検索とその生理作用の解明
Project/Area Number |
18020006
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
桜井 武 筑波大学, 大学院人間総合科学研究科, 助教授 (60251055)
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Keywords | 扁桃体 / 神経ペプチド / NPW / GPR7 |
Research Abstract |
情動は、大脳辺縁系で制御されている。とくに、得られた感覚刺激に対する生物学的な価値判断は大脳辺縁系の一部である扁桃体によって行われているとされている。扁桃体は感覚系から由来する全ての入力を受けて、中心核から視床下部や脳幹部・視床・中隔などに出力している。このように、扁桃体の最も重要な働きは、感覚情報の生物学的な価値評価である。GPR7はオーファンG蛋白質共役受容体としてみつかった遺伝子であるが、われわれのグループは脳抽出物からNPB (neuropeptide B)、NPW (neuropeptide W)をリガンドとして同定している。GPR7とそのリガンドは、それぞれ脳内の室傍核、海馬、扁桃体(NPB)、中脳や脳幹(NPB、NPW)に特異的に発現している事から、摂食、不安、恐怖等の精神・神経作用に関連する事が示唆される。これまでのGPR7ノックアウトマウスを用いた研究では主に摂食・エネルギー代謝調節における影響の報告が中心であったが、扁桃体での強い発現にも関わらず不安や恐怖記憶などの精神神経作用については未だ報告がなされていない。そこで我々のグループは不安関連の行動テストバッテリーを用いてGPR7遺伝子ノックアウトマウスの行動変化を調べた。その結果、GPR7ノックアウトマウスでは不安関連の行動実験において不安行動の亢進が確認されresident-intruder testにおいては、intruderに対する積極的接触までの時間が有意に短く、接触時間が有意に長かった。またこの際、自律神経系の反応を介する心拍数・血圧の上昇が大きくかつ遷延する傾向がみられた。さらにCued and contextual fear conditioning testにおいては、音による条件刺激(CS)に対する反応は正常なものの、contextual test時のfreezingが減少している事から情動記憶の形成または表出における異常が示唆された。また、ストレス負荷後の内分泌系のストレス反応はWTと比べて異常がないことから、HPA軸への出力は正常であると推定された。以上の結果からGPR7はストレスや恐怖、脅威に対して適切な行動を取り対処する、また適切な自律神経系の反応を惹起するという、生存するにあたって非常に重要な反応の制御において重要な役割を担っている事が考えられる。
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Research Products
(7 results)