2006 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
18020009
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
渡辺 正峰 東京大学, 大学院工学系研究科, 助教授 (50312989)
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Keywords | 推論 / 高次脳機能 / fMRI / 理論モデル / 直感 |
Research Abstract |
人は初めて出会った難しい状況でも柔軟に対処することが可能である。そこで鍵となるのは、多くの戦略の中から筋のよいいくつかを選択し(初期選択過程)、その後それらが論理的に正しいか、順を追って検証する(検証過程)効率のよさである。たとえば将棋などは、その探索空間の広さからいまだにAIプレーヤがプロ棋士に勝つことができないが、これは一重に人が「直感」をつかって無数の可能な手筋の中から"よさそうな手"を絞り込み、それらについてのみ論理的検証を行うためと考えられている。本研究では、以上のような、人の複雑問題解決プロセスについて、モデルと脳イメージングの両面からその神経機序を解き明かすことを目的とする。 推論に関する従来研究では、初期選択の負荷の小さい課題(Tower of London)や逐次報告の難しい課題(anagram task)が多く用いられていたため、本研究では初期選択過程と検証過程を分離することを目標として、arithmetic search taskを提案した。これは、初期数字に対して4つの演算数を順次掛け算もしくは引き算して目標数字を目指すというものである。数時間訓練した被験者は、可能な演算の組み合わせが100以上あるにもかかわらず、90秒の間に平均5割以上の問題を解いてしまう。ひとつの組み合わせを検証するには(順次計算して目標にいたるか確かめる)10秒以上かかるため、確かに初期選択が行われていることがわかる。実験中は、自覚的に行った計算はすべて報告するように要求しており、反応時間から特に第一の演算子を押すときに、初期選択の負荷が高まっていることがわかった。反応時間に比例するような活動を示す脳部位を特定すると、fronto-parietalネットワークの活動がみられた。また追加実験として、訓練時の演算数を限定した場合には、訓練時に用いた演算数の試行とそうでない試行との間では、同様の部位で明確な活動の差が表れており、これは認知地図の有無を反映するものと考えている。
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Research Products
(2 results)