2006 Fiscal Year Annual Research Report
衝動性と将来報酬予測機能における脳内セロトニンの役割
Project/Area Number |
18020021
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
山脇 成人 広島大学, 大学院医歯薬学総合研究科, 教授 (40230601)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岡本 泰昌 広島大学, 大学院医歯薬学総合研究科, 講師 (70314763)
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Keywords | 衝動性 / 報酬予測 / セロトニン / fMRI / 急性トリプトファン欠乏 / 過剰 |
Research Abstract |
衝動性とは、注意深い吟味が必要な状況において、周囲の状況にふさわしくない拙速な行動を行ってしまう特性である。衝動性のモデルの一つとして、将来の報酬を低く見積もる傾向が衝動性に関連するというreward-delay impulsivityが提案されている。報酬予測機能に、セロトニンが関与しているという仮説があり、これを支持する知見が報告されている。本研究では、ヒトにおける報酬予測機能へのセロトニンの役割を検討するため、健常者においてトリプトファン欠乏/過剰を用いて実験を行った。 方法:セロトニンの前駆物質であるトリプトファンを欠乏あるいは過剰にした飲料を服用することで脳内セロトニンの濃度を低下あるいは亢進させる操作を行った。この条件下で、画面上の刺激を選択することによって異なる額の報酬を選択するという報酬選択課題を行った。このときの脳血流反応を機能的MRI(fMRI)を用いて記録・解析した(実験1)。また、各トリプトファン条件における行動データに焦点をあてた計算論的モデルによる解析も行った(実験2)。 結果:実験1では、線条体において、トリプトファン欠乏条件では将来報酬をより低く見積もる値引き関数と、腹側線条体において相関していた。トリプトファン過剰条件では、将来報酬をより高く見積もる関数と、背側線条体において相関がみられた。実験2では、トリプトファン欠乏条件において、他の条件よりも短期小報酬の選択割合が高かった。 考察:fMRI実験において、トリプトファン欠乏では線条体腹側が、過剰条件では線条体背側が活性化することが確認され、中枢セロトニンが報酬予測の時間スケールに関与することが示唆された。また、報酬選択の行動解析実験において、トリプトファン欠乏条件では、遅延時間に応じて報酬をより低く見積もる傾向が認めら、中枢セロトニン神経機能低下が衝動性と関連する可能性が示唆された。
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