2006 Fiscal Year Annual Research Report
扁桃体に依存しない情動反応の神経機構:視床下部背内側核の働き
Project/Area Number |
18020025
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Research Institution | Jichi Medical University |
Principal Investigator |
尾仲 達史 自治医科大学, 医学部, 教授 (90177254)
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Keywords | 視床下部背内側核 / PrRP / 条件恐怖刺激 / 新奇環境刺激 / 神経内分泌 / 高架十字迷路 / ストレス / 扁桃体 |
Research Abstract |
情動ストレス刺激に対する生体の反応、特に、神経内分泌反応を指標として、扁桃体と視床下部背内側核の働きを破壊実験により検証した。情動ストレス刺激としては、条件恐怖刺激と新奇環境曝露刺激を用いた。動物は、ラットを用い、神経細胞体の破壊実験には、NMDAの局所投与を用いた。条件恐怖刺激の場合は訓練後に破壊手術を行った。扁桃体基底外側核を破壊すると、すくみ行動のみならず、脱糞反応、神経内分泌系の反応(ACTH放出反応、バゾプレシン分泌抑制反応、プロラクチン放出反応)が著しく阻害された。扁桃体内側核を破壊すると、条件恐怖刺激に対するすくみ行動は阻害されず神経内分泌系の反応のみが減弱した。これに対し、扁桃体基底外側核あるいは内側核を破壊しても、新奇刺激に対する神経内分泌系の反応は阻害されなかった。一方、視床下部背内側核を破壊すると、条件恐怖刺激に対する行動と神経内分泌系の反応は阻害されず、新奇刺激に対する神経内分泌系の反応と脱糞反応が減弱した。これらのデータは、扁桃体内において神経内分泌系と行動系の恐怖の情動表出において機能分化があること、扁桃体に依存しない情動反応表出の少なくとも一部に視床下部背内側核が重要であることを示唆している。 視床下部背内側核には、PrRP含有ニューロンの神経細胞体が存在する。そこで、PrRPの新奇環境下における情動行動における働きを検討した。新奇環境下における情動行動テストとして高架十字迷路テストを用いた。PrRPをラットの脳室内に投与すると高架十字迷路テストにおける不安行動が減少した。逆に、内因性のPrRPの働きを阻害する目的で、PrRP中和抗体を脳室内に投与すると、高架十字迷路テストにおける不安行動が増大した。従って、内因性のPrRPは新奇環境下における不安関連行動を抑制していることが示唆された。
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