2006 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
18020037
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
山本 慎也 独立行政法人産業技術総合研究所, 脳神経情報研究部門, 研究員 (90371088)
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Keywords | 神経科学 |
Research Abstract |
脳が外界を再構成する際に、その空間構造を適切に把握することは、生存において非常に重要な役割を果たしている。これまでの神経科学の研究において、さまざまな観点から、空間の再構成のメカニズムの解明が行われてきたが、中でもヒトを用いた「左右」の空間表現に関する研究は数多くなされてきた。一方、空間内における「左右」軸はあくまで相対的なものであり、ほかの2軸と密接にかかわりあってくる。このように、脳の空間認知機構を考える上で、上下の知覚を考えることは必要不可欠であり、本研究計画は、脳における上下方向の脳内表現の解明することによって、空間認知のメカニズムの理解に貢献することを目標とした。 はじめに、我々は、上下をひっくり返すことによって違う意味を持つタイプの多義図形(以下「逆さ絵」)を用い、重力に対する我々の姿勢が視知覚に影響を与えるのかどうかを調べた。逆さ絵を顔に対して横に提示し、さまざまな姿勢で提示した場合、この知覚がどのように変化するだろうか?逆さ絵を、uprightで見た場合、顔に対して右側が上の図が見える確率と顔に対して左側が上の図が見える確率はほぼ五分五分であった。一方、顔に対してはあくまで横向きのまま(ヘッドマウントディスプレイ等で網膜像をほぼ同一のものにしたまま)、姿勢だけを変えた場合、顔の右側を上にした場合には、顔に対して右側が上の意味が知覚される確率は70%と有意に増加し、顔の左側を上にした場合には、その確率が40%以下に有意に減少した。 このように、網膜への視覚入力がほぼ同じなのにもかかわらず姿勢によって視知覚が変わることから、逆さ絵の知覚は単に視覚入力のみならず、前庭入力や固有覚入力・触覚入力のマルチモーダルな情報を統合することによって生成されている可能性が示唆された。このような情報統合が脳内で実際にどのように行われているかは未だ不明であり、今後の解明が求められる。
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Research Products
(1 results)