2007 Fiscal Year Annual Research Report
高等哺乳動物フェレットを用いた視覚神経系形成の分子基盤解析
Project/Area Number |
18021007
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
河崎 洋志 The University of Tokyo, 医学部附属病院, 特任准教授 (50303904)
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Keywords | 脳・神経 / 発生・分化 / 神経科学 |
Research Abstract |
外界からの視覚情報は網膜で検出され、中継核である視床の外側膝状体(LGN)を介して、大脳皮質視覚野へと伝達される。網膜からLGNへと至る神経回路は、右もしくは左眼由来の軸索がLGN内で異なる場所を支配している(眼優位性投射)。しかし発生段階の早期には、左右両眼からの軸索はLGN内で完全にオーバーラップしており、支配領域の分離は見られない。フェレットやマウスでは生直後より両眼由来軸索の分離が始まり、生後2週目には分離が完成することが知られている(眼優位性軸索分離)。この眼優位性軸索分離には網膜自発発火が重要であると考えられている。網膜自発発火を、ニコチン性アセチルコリン受容体刺激薬epibatidineを用いて抑制すると、眼優位性軸索分離が阻害され、両眼からの軸索はオーバーラップしたままとなる。 従来、epibatidineによる眼優位性軸索分離の阻害効果は、RGC軸索の競合阻害により生じると考えられてきたが、もう一つの可能性、即ちepibatidineがLGNの分化過程を阻害し、その結果として眼優位性軸索分離が阻害されるという可能性は検討されてこなかった。そこで我々は、発生過程においてLGNに発現する遺伝子群のスクリーニングを行い、これらの分子の発現を指標としてLGNの分化過程の進行を検討したところ、epibatidineはLGNの分化過程の進行を止めないことが示唆された。以上の結果は、LGN分化過程の進行は網膜からの入力とは独立の現象であることが示唆しており、また、epibatidineによる眼優位性軸索分離の阻害には、LGNの分化過程は関与しないことを示唆している。
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Research Products
(10 results)