2006 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
18021016
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
藤澤 肇 名古屋大学, 大学院理学研究科, 研究員 (60079689)
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Keywords | 海馬 / 層特異的投射 / セマフォリン / セマフォリン受容体 / 遺伝子機能破壊マウス |
Research Abstract |
個々の神経細胞は複数の入力を受けており、それぞれの入力繊維は樹状突起の特定の分節(Segment)に選択的に投射する。このような入力繊維が特定の細胞層や、特定の樹状突起の分節に投射しそこでシナプス結合する現象を層特異的神経投と呼ぶ。海馬CA3領域は様々な脳領域からの入力を受けるが、歯状回顆粒細胞からの入力繊維(mossy fiber:MF)は錐体細胞の樹状突起の最近位部に入力する。このような層特異的なMF投射は海馬の神経機能を考える上にきわめて重要であるが、その分子制御機構はほとんどわかっていない。我々は、軸索ガイド因子Sema6Aとその受容体であるplexin-A2並びにplexin-A4の遺伝子の機能欠損マウスの解析を行い、以下に述べるような結果を得た。 1)plexin-A4タンパク質はMFに局在し、そのリガンであるSema6AはCA3に分布する。 2)plexin-A4変異マウスでは、MFは錐体細胞樹状突起の遠位から近位まで幅広く投射する。 3)培養下で、Sema6Aはplexin-A4を発現する野生型マウスのMFの成長円錐の崩壊を引き起こす。しかしながら、plexin-A4欠損MFはSema6Aにたいする反応性が完全に消失する。 4)plexin-A2変異マウスではMFはCA3錐体細胞の樹状突起部に侵入できず、全て錐体細胞層の下方部や錐体細胞層に侵入する。一方、Sema6A変異マウスではMFの投射は正常であるが、Sema6A/plexin--A2二重変異マウスではplexin-A2変異マウスが示すMFの異常投射が完全に回復する。 5)plexin-A2タンパク質はCA3錐体細胞の樹状突起の近位部に分布し、培養下で、plexin-A2はSema6Aとplexin-A4との相互作用を競合的に阻害し、Sema6Aが引き起こすMFの成長円錐の崩壊を抑制する。 以上の結果は、CA3領域に発現するSema6AがMFのCA3への進入を阻止しているが、CA3錐体細胞の樹状突起の近位部にplexin-A2が発現しているため、この領域ではSema6AのMF反撥活性が抑制され,MFの進入が可能となることを示している。
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