2006 Fiscal Year Annual Research Report
大脳皮質視覚野における長期増強の経験依存的機能発達に果たす役割
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18021017
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
小松 由紀夫 名古屋大学, 環境医学研究所, 教授 (90135343)
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Keywords | 眼優位可塑性 / T型Ca^<2+>チャネル / 長期増強 / 視覚野 / 経験依存的機能発達 / 片眼遮蔽 / シナプス可塑性 / ノックアウトマウス |
Research Abstract |
1)大脳皮質視覚野の興奮性シナプスにおけるNi^<2+>感受性Ca^<2+>チャネル依存性の長期増強は、眼優位可塑性と同様な年齢と視覚体験に対する依存性を示す。この長期増強が眼優位可塑性に関与するかを検討した。 2)昨年度のラットを用いた研究で、この長期増強はT型Ca^<2+>チャネルの活性化を必要とすることを明らかにした。また、視覚誘発電位の記録とmibefradilによるT型Ca^<2+>チャネル阻害により、この長期増強が片眼遮蔽により生ずる非遮蔽眼の視覚反応の増大に寄与することを示唆する結果を得た。 3)mibefradilは選択性が低いので、本年度は、T型Ca^<2+>チャネルのノックアウトマウスを用いてこの問題を検討した。T型Ca^<2+>チャネルにはα_<1G>、α_<1K>、α_<1I>の3種類のα_1サブユットから構成されるサブタイプが存在する。この中でα_<1H>だけが高いNi^<2+>感受性を示すので、このサブタイプのT型Ca^<2+>チャネルが視覚野のCa^<2+>チャネル依存性の長期増強誘発に寄与する可能性が高いと考えられる。 4)T型Ca^<2+>チャネル欠損マウスにおいて眼優位可塑性が障害されているかを、視覚野から視覚誘発電位を記録して検討した。野性型マウスを生後26日から5日間片眼遮蔽すると、遮蔽眼刺激により誘発される反応は減弱し、非遮蔽眼刺激により誘発される反応は増大し、眼優位性はシフトした。α_<1G>欠損マウスでは野性型と全く同様な眼優位性シフトが見られた。α_<1H>欠損マウスでは、遮蔽眼刺激に対する反応は減弱したが、非遮蔽眼刺激により誘発される反応に増大は見られなかった。 5)以上のラット用いた薬理学実験とノックアウトマウスを用いた実験は、T型Ca^<2+>チャネル依存性長期増強が片眼遮蔽により生ずる非遮蔽眼の視覚反応の増大に寄与することと、α_<1H>サブユニットからなるT型Ca^<2+>チャネルがこの過程に重要な役割を果たすことを示唆している。
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