2006 Fiscal Year Annual Research Report
ナノプローブを用いた神経細胞の信号測定-任意の部位からの電位測定システムの開発-
Project/Area Number |
18021024
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
宋 文杰 熊本大学, 大学院医学薬学研究部, 教授 (90216573)
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Keywords | 神経科学 / 生理学 / 脳・神経 |
Research Abstract |
現在、神経細胞の電気信号を計測する最も直接的な方法はガラス微小電極を用いる方法であるが、この方法では、神経細胞の樹状突起で、どのような信号が発生し、それがどのように統合・伝播されるかについては、少数例を除いて、調べることができない。本研究では、カーボンナノチューブ(CB)をベースにしたナノプローブを開発し、膜電位を神経細胞の任意の部位から計測できる新しい方法を開発することを研究目的とした。 ナノプローブを膜電位計測に適用させるために、研究協力者の研究室において(大阪大学大学院工学研究科片山研究室)、タングステン線または白金イリジューム線を電気研磨して、先端半径を数十nmにし、その先端にCBをつけることができた。細胞内に刺入できるようにするために、CBの長さをμmオーダにすることができた。膜電位を計測できるようにするために、プローブの先端以外を絶縁させる必要がある。そのために、酸化シリコンでプローブ全体を皮膜し、そして、先端部分を数十から数百nmのみ絶縁皮膜を除去することに研究協力者の研究室において成功した。このようなプローブを膜電位計測に用いたところ、プローブの電気容量が許容範囲以上に大きいことと、絶縁抵抗が細胞の入力抵抗に比べ、十分に大きくないことが判明した。これらの問題を解決するために、CB部以外の部分の絶縁コーティングを酸化シリコン皮膜の替わりに、フッ素樹脂レジスト剤やカシュー樹脂などを用いて実験した。その結果、電気容量の低下と絶縁抵抗の向上が一桁ほど見られたが、膜電位の計測には不十分であった。プローブ電気容量はプローブをリンガー液内に存在する神経細胞に刺入する必要があるため発生するが、原理的に溶液に接触する部分の面積を減らすことが電気容量の低下と絶縁抵抗の向上に繋がる。今後この原理に基づいて絶縁材料や絶縁方法の工夫も含めて計測プローブを完成させる計画である。
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