2006 Fiscal Year Annual Research Report
神経回路の機能的発達に対する内因性カンナビノイドを介するシナプス可塑性の寄与
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18021038
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Research Institution | National Institute for Physiological Sciences |
Principal Investigator |
前島 隆司 生理学研究所, 発達生理学研究系, 助手 (70399319)
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Keywords | 逆行性シグナル伝達 / 内因性カンナビノイド / カンナビノイド受容体 / 海馬 / 抑制性シナプス伝達 |
Research Abstract |
内因性カンナビノイドによる逆行性シグナル伝達は、興奮性と抑制性シナプス間における異シナプス修飾作用を介在し、発達期の神経回路において興奮性入力と抑制性入力のバランスを正常に保つために不可欠な分子機構であるか検証した。準備実験として幼若期(生後1-2週)の海馬より機械的に単離した神経細胞/シナプスボタン標本を用いて実験を行った。自発的に発生する抑制性シナプス電流は薬理操作によりmGluR1/5代謝型グルタミン酸受容体を活性化すると一過性に抑制され、その作用はCB1受容体のアンタゴニストで阻害されることがわかった。また、CB1受容体の阻害剤投与により、その自発性応答の頻度が著しく上昇した。このことから恒常的なシナプス伝達の抑圧が生じていることがわかった。次に、これらの作用を幼若期の海馬スライス標本において再現し、興奮性シナプスの活動に依存した抑制性シナプス伝達の短期的および長期的な修飾作用について実験を行った。生後2週目のラットにおける海馬CA 3領域の錐体細胞において、抑制性シナプスの短期的な抑圧現象を見出した。これまでに組織学的な観察により、内因性カンナビノイドの生合成に関与する分子は、成熟時には興奮性シナプスの直下に存在することが示されている。今後は、GABA作動性シナプスが興奮性に作用する生後1週目までの時期を対象に実験を行い、発達過程における分子機構の変遷について検証する。また、CB1受容体の活性化はシナプス終末の活動に抑制的な作用を及ぼすため、その恒常的な作用は最終的に構造的なシナプス結合の弱化・除去を誘引すると考えられる。そのため、シナプス結合を可視化し、機能的変化と形態学的変化を経時的に観察する実験系を立ち上げることを検討した。ラット脳より摘出した海馬領域のスライス培養標本を作製し、領域内の興奮性投射線維を蛍光色素にて可視化することを試みた。
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