2006 Fiscal Year Annual Research Report
黒質網様部および上丘局所回路内抑制性ニューロンの機能的相違
Project/Area Number |
18021039
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Research Institution | National Institute for Physiological Sciences |
Principal Investigator |
金田 勝幸 生理学研究所, 発達生理学研究系, 助手 (30421366)
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Keywords | 上丘 / バースト発火 / サッケード / GABA作動性ニューロン / 黒質網様部 / 局所神経回路 |
Research Abstract |
中脳上丘中間層ニューロンのバースト発火は眼球サッケード運動などの指向運動の開始において重要な役割を果たしている。バースト発火の生成には黒質網様部由来のGABAによる抑制からの脱抑制が重要であることが知られている。一方、上丘中間層には興奮性の投射ニューロンのみでなく、GABA作動性ニューロンも存在することが明らかになってきている。しかし、黒質からの入力がこれらのGABA作動性ニューロンにも投射しているのか否かは明らかではなかった。本年度はこの点を明らかにする目的で以下の研究を行った。 順行性トレーサーであるBDAを柳川らにより作製されたGAD67-GFP knock-inマウスの黒質網様部に注入し、その神経投射を共焦点レーザー顕微鏡で調べたところ、黒質由来の神経終末が上丘中間層のGFP陽性細胞上にシナプスを形成していることが明らかとなった。さらに、このマウスからスライス標本を作製しGFP陽性細胞からホールセルパッチクランプ記録を行い、黒質からの投射線維が通過する上丘の腹側部を電気刺激すると、単シナプス性のIPSCsが観察されることを見出した。このIPSCsの逆転電位はCl-の平衡電位付近であり、さらに、GABAd_A受容体アンタゴニストの投与により完全にブロックされた。バイオサイチン染色による形態学的解析から、さまざまなタイプのGABA作動性ニューロンでIPSCsが誘発されることが明らかとなった。以上の結果は上丘中間層に存在するGABA作動性ニューロンが黒質由来のGABA入力を受けていることを示している。このことは黒質網様部由来の抑制性入力の機能が単に投射先で興奮・抑制のバランスを制御しているという従来の考えにとどまらず、上丘局所回路のダイナミクスのより複雑な機能の制御に関与している可能性を示唆している。
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