2006 Fiscal Year Annual Research Report
PrecursorBDNFによるシナプス退縮のメカニズムとその生理的役割
Project/Area Number |
18021042
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
小島 正己 独立行政法人産業技術総合研究所, セルエンジニアリング研究部門, 主任研究員 (40344171)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
清末 和之 独立行政法人産業技術総合研究所, 脳神経情報研究部門, 主任研究員 (50356903)
武井 延之 新潟大学, 脳研究所, 助教授 (70221372)
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Keywords | 脳・神経 |
Research Abstract |
脳由来神経栄養因子(BDNF)を含む神経栄養因子群の生理作用は、神経細胞の生存維持・アクソン・デンドライトの伸展・シナプス伝達の調節と説明されてきた。しかし、HempsteadらがNGFの前躯体(proNGF)が神経細胞死を促進することを報告して以来(Lee et al.,Science,2001)、神経栄養因子の前駆体(proBDNF)の生理機能を検証する研究が始まった。BDNFの一塩基多型SNPの分子機能の研究、つまり、前躯体型BDNFを成熟型BDNFに変換するプロセッシングに影響するpolymorphismの分子解析から、神経栄養因子の前駆体の解析を開始した。また、電気生理学を専門とする分担者の参加により、BDNF依存的なシナプス機能調節とコレステロールの関係も研究した。 結果:3週間以上培養した成熟海馬神経細胞にmature BDNF(50ng/ml)あるいはproBDNF(50ng/ml)を添加し48時間後のスパインをDiIラベルで同定し、Ist-blanchingから一定距離までの数をカウントした。mature BDNFはDiIラベルのスパイン密度を増加させるがproBDNFは減少させることが見出された。proBDNFのこのような効果は海馬スライス培養においても同様であった。このようなスパイン数の変化がシナプス形成と維持にどのように影響するのかを知るために、プレシナプスマーカーsynaptophysinとポストシナプスマーカーPSD-95の抗体を用いて培養海馬神経細胞の染色を行った。その結果、proBDNFが存在するPSD-95抗体でラベルされるpunctateの密度だけが有意に減少し(74.2±0.565%)、synaptophysin抗体でラベルされるプレシナプスと両マーカーでラベルされるシナプス密度に変化がなかった。以上の結果は、proBDNFがスパインを縮める作用とPSD-95が存在する過剰なポストシナプスを排除する可能性を示唆する。 また、成熟型BDNFによるシナプス機能の発達も研究してきた。我々が見つけた新たな作用は、mature BDNFが神経細胞のコレステロール合成を促進すること、その結果として神経細胞のLipid rafts構造の成長を促し、Synaptic vesiclesのReadily releasable poolのサイズを大きくすることを見出した。
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