2006 Fiscal Year Annual Research Report
神経幹細胞の非対称分裂における細胞骨格系の制御メカニズムの解析
Project/Area Number |
18022001
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
若松 義雄 東北大学, 大学院医学系研究科, 講師 (60311560)
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Keywords | 細胞骨格 / 中間径繊維 / 非対称 / 神経幹細胞 / Transitin / アクチン / 幹細胞 / 分化 |
Research Abstract |
脊椎動物の神経系の発生過程においては、神経幹細胞が自己複製を行いながら分化したニューロン等を生み出していく。この過程では、神経幹細胞が非対称分裂をおこなう可能性が考えられる。これまでの研究から、Numbは分裂期の初めに細胞質表層の基底膜側に非対称に局在し、この細胞内局在には、同様に基底膜側に局在する中間径繊維蛋白質Transitinへの直接の結合が必要であることがわかった。さらに、Transitin-GFP融合蛋白質を導入した脳スライスのタイムラプス観察をおこなった結果、いったん基底膜側に局在したNumb/Transitin複合体は、およそ2/3の細胞分裂の場合では、分裂期の終わりに細胞の側方に移動し、片方の娘細胞に不等分配される。また、Transitinの発現をRNAiによって抑制した場合にNumbの非対称な局在がみられなくなり、神経上皮細胞の増殖の抑制とニューロンの分化の促進が観察された。このTransitin/Numb複合体の側方輸送のメカニズムについて調べたところ、Transitin/Numbは細胞表層のアクチン骨格にアンカーされており、ミオシン2によって輸送されていることがわかった。 今年度は、アクチン骨格がTransitin/Numb複合体の局在と側方輸送に必要であることから、神経上皮細胞で発現するアクチン結合分子として、FilaminBに注目した。Filaminファミリー蛋白質は2量体としてアクチン繊維に結合し、網目構造や平行繊維構造の形成に働くが、同時に様々な蛋白質と結合して足場蛋白質として機能することが知られている。FilaminBの発現について調べたところ、mRNA、蛋白質の両方が神経上皮細胞の頂端側にアクチン繊維とともに局在することを発見した。胚神経組織へのcytochalasinD注入によってAcitn繊維を壊すと、このFilaminBの局在は失われたことから、FilaminBの局在にはActin繊維が必要であることがわかった。次に、RNAiベクターを構築し、神経管に電気穿孔法によって導入したところ、FilaminBタンパク質の発現低下が確認されたので、以降このベクターをもちいて解析をおこなった。すると、多数の神経上反細胞でFilaminBのノックダウンをした場合、神経組織の層構造に乱れが生じ、分化したニューロンが神経管の内腔に分布しているのが観察された。様々な細胞接看因子の発現を調べると、ギャップ結合を形成するZO-1の発現低下が観察され、FilaminBが神経上皮細胞同士の接着性の維持に寄与していることが明らかとなった。一方、少数の細胞でFilaminBがノックダウンされている場合には、ニューロン分化の抑制効果が認められた。分裂中の神経上皮細胞ではTransitinやNumbの非対称な局在が乱れていたことから、細胞極性の異常か、Transitin/Numb複合体の輸送に問題があることが示され、これによってニューロン分化の異常がおきている可能性が示唆された。にこれらの観察から、FilaminBが神経上皮細胞の極性形成やアクチン骨格の動態の制御に関わる可能性が示唆された。
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Research Products
(2 results)
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[Journal Article] Sox genes regulate type 2 collagen expression in avian neural crest cells.2006
Author(s)
Suzuki, I., Sakai, D., Osumi, N., Wada, H., Wakamatsu, Y.
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Journal Title
Development, Growth & Differentiation 48
Pages: 477-486