2006 Fiscal Year Annual Research Report
イノシトールリン脂質の蓄積による神経細胞死亢進機序の解明
Project/Area Number |
18022005
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Research Institution | Akita University |
Principal Investigator |
佐々木 純子 秋田大学, 医学部, 助手 (30333371)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐藤 紳一 秋田大学, 医学部, 技術長 (10375305)
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Keywords | イノシトールリン脂質 / 遺伝子改変マウス / 神経科学 |
Research Abstract |
イノシトールリン脂質(PIs)は生体膜構成成分であるのみならず、細胞内シグナル分子として機能する。生体内には7種類のPIsが存在するが、我々はいまだ解析の進んでいないPI(3,4)P2の生理機能に着目し、これを代謝する酵素の遺伝子欠損マウスを作製した。欠損マウスでは、脳内におけるPI(3,4)P2の蓄積とともに、神経細胞死とグリオーシスが認められ、顕著な運動異常を呈する。本研究では、PIs代謝異常による神経細胞死誘導のメカニズム解明を目的とし、本年度は欠損マウスにおける神経細胞死の発生機序について解析した。NMDA受容体拮抗薬により欠損マウスの運動異常は改善されることから、グルタミン酸による神経毒作用が運動異常を引き起こす一要因と考えた。グルタミン酸による神経毒作用の発現には、シナプス前神経終末から放出されるグルタミン酸量の増加やグルタミン酸の取り込み低下、あるいはシナプス後細胞のグルタミン酸に対する感受性の亢進が関与すると考えられる。そこでこれらの点について、初代培養神経細胞、シナプトソーム、および脳スライス標本を用いた解析を行った。線条体から調製したシナプトソームや初代培養神経細胞を用いて、グルタミン酸の放出や取り込みを測定したところ、野生型と同程度であった。また、マイクロダイアリシス法により線条体のグルタミン酸量を定量しても、野生型との差は認められなかった。一方、欠損マウスの脳スライス標本や初代培養神経細胞においては、NMDAに対する反応性の亢進が認められた。以上の結果から、シナプス後細胞のグルタミン酸に対する感受性の亢進が運動異常の原因の一つであると考えられた。
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