2006 Fiscal Year Annual Research Report
海馬回路網からの刺激に依存した成体神経幹細胞の運命決定機構の解明
Project/Area Number |
18022008
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
久恒 辰博 東京大学, 大学院新領域創成科学研究科, 准教授 (10238298)
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Keywords | 神経幹細胞 / 海馬 / ニューロン新生 / 神経回路再生 / 成体(大人) / 脳梗塞 / 細胞分化 / 電気生理学 |
Research Abstract |
我々はこれまでに、成体海馬において神経幹細胞から新生ニューロンが生み出されるニューロン新生の細胞分化過程を解き明かすために、『蛍光ガイド神経幹細胞パッチクランプ法』を開発し、分化段階の異なる2種類の神経幹細胞(Type-1細胞とType-2細胞)を同定した。そして、後期神経幹細胞であるType-2細胞は、海馬のGABA神経より興奮性の神経入力を受け、海馬回路の活動に依存してニューロン分化が促されていることを見出した。 本研究においては、カニクイザルの中大脳動脈閉塞モデルを用いて、霊長類においても脳梗塞後に海馬新生ニューロンの数が顕著に増加することを見出した。そして、脳梗塞後に新生ニューロンが増加する機構を解明するために、げっ歯類中大脳動脈閉塞モデルを用いて研究を行った。すると、驚くことに、中大脳動脈の閉塞後2日目から海馬回路の活動性が顕著に増大することが、この動物の海馬に挿入した慢性電極からの記録により明らかとなった。つまり、脳梗塞後のニューロン新生の増加においても、海馬回路の活動上昇が寄与していることが推測された。この活動上昇に応じて、Type-1細胞が活性化され、この細胞の増殖が誘導されることが明らかとなった。そして、Type-2細胞の増加を経て、新生ニューロン数が増加することが判明した。海馬回路の活動によりどのような仕組みでType-1細胞が活性化されるかを明らかにするために、海馬スライスを用い嗅内皮質から海馬への投射線維である貫通線維を高頻度(テタヌス刺激、シータバースト刺激等)で電気刺激し、Type-1細胞に誘起されるカルシウム応答を評価した。その結果、貫通線維を40μAの強さでシータバースト刺激することで、Type-1細胞に強いカルシウム応答が誘導されることが示された。この応答が引き金となって、Type-1細胞の増殖が誘導されていることが推定された。
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