2006 Fiscal Year Annual Research Report
線虫の化学走性学習に関わる分子パスウェイの機能解析
Project/Area Number |
18022011
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
飯野 雄一 The University of Tokyo, 大学院・理学系研究科, 教授 (40192471)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
國友 博文 東京大学, 遺伝子実験施設, 助教 (20302812)
|
Keywords | 線虫C.エレガンス / 学習 / インスリンシグナル伝達経路 / PI3キナーゼシグナル伝達経路 / シナプス伝達 / Gq経路 |
Research Abstract |
線虫の化学走性学習の分子機構の研究を進めた。以前に、インスリンシグナル伝達経路の変異体が化学走性学習に欠損を持つことを見出していた。インスリン様ペプチドINS-1が感覚神経ASERに働きかけることにより、この神経でインスリン受容体DAF-2、PI3キナーゼAGE-1、PDK、AKTからなるPI3キナーゼシグナル伝達経路が働き、この結果、ASER感覚神経で受容されるNaClに対し、線虫は負の化学走性を示すことになることまでわかっていた。今回、この行動変化がASER神経のどのような変化によって起こるのかを検討した。ASER神経のNaClに対する応答を調べたところ、学習の前後でその応答は変化せず、インスリン経路の活性が低下する、あるいは昂進する変異体でも変わりがなかった。この結果は、インスリン/PI3キナーゼ経路が感覚受容を制御して行動を変化させているのではないことを示唆した。そこで、インスリン経路の活性が昂進するdaf-18変異体のサプレッサー変異の分離を行った。多くのサプレッサー変異が得られ、そのうちのひとつはegl-30の変異であることがわかった。egl-30はGqタイプのG蛋白質アルファサブユニットをコードし、シナプス伝達を制御することが運動神経において知られていた。得られた変異はアミノ酸置換を起こすものであったが、機能昂進型変異と思われた。この変異遺伝子を、ASER感覚神経で発現させるとやはりdaf-18がサプレスされた。また、下流で働くと考えられる。ジアシルグリセロールのアナログであるホルボールエステルの添加や、nPKC(プロテインキナーゼC)の活性化型変異遺伝子のASERでの発現によっても同様の効果が得られた。このことから、インスリンシグナル伝達がシナプス伝達を制御する可能性が示唆された。
|