2006 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
18022016
|
Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
少作 隆子 金沢大学, 医学系研究科, 教授 (60179025)
|
Keywords | 同期性検出器 / NMDA型グルタミン酸受容体 / ホスホリパーゼC / カルシウムイオン / 内因性カンナビノイド / 海馬ニューロン / シナプス可塑性 / 神経生理学 |
Research Abstract |
1.脳の大脳皮質や海馬では、シナプス前ニューロンと後ニューロンのスパイク発生のタイミングに依存しシナプス伝達効率が長期的に変化する(spike timing-dependent long-term potentiation or depression : tLTP or tLTD)。tLTPに関しては、NMDA型グルタミン酸受容体がタイミング検出器として働くと考えられている。一方、tLTDに関与するタイミング検出器については未だ不明である。最近になり、tLTDの誘導に内因性カンナビノイド(eCB)が関与していることが報告され、eCB放出に重要な役割を担うPLCβがタイミング検出器として働く可能性が示唆された。一方、NMDA受容体がeCB放出に関与するかどうかについてはほとんど調られていない。そこで、本研究においてその可能性を検討した。 2.実験には培養海馬ニューロンを用い、eCB放出はカンナビノイド感受性IPSCの振幅の減少を指標にして調べた。200μM NMDA投与ではIPSC振幅は著しく減少した。また、20μM NMDAは単独ではIPSCの減少を引き起こさないが、低濃度のムスカリン受容体アゴニストあるいはグループI型代謝型グルタミン酸受容体(I-mGluR)アゴニスト投与によるIPSCの減少を著しく増強した。また、電位依存性Ca^<2+>チャネル阻害剤の影響をほとんど受けなかった。NMDA投与によるIPSCの減少はカンナビノイド受容体アンタゴニスト処理により完全に消失することから、eCB放出を介することが判明した。放出されるeCBの分子実体としては、DAG lipase阻害剤が有効であることから、2-AGである可能性が高いと考えられた。 3.以上より、NMDA受容体の活性化による細胞内Ca^<2+>濃度上昇がI-mGluR活性化と同期することにより、より効率的にeCB放出を引き起こしうることが証明された。本研究により、eCB放出にPLCβとNMDA受容体という二つのタイミング検出分子が関与していることが明らかとなった。これらがtLTDの誘導にどのように関わっているのかについて今後さらに検討する予定である。
|