2006 Fiscal Year Annual Research Report
変異マウスと電気穿孔法を用いた、神経細胞の特異性獲得と移動の分子機構の研究
Project/Area Number |
18022019
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
星野 幹雄 京都大学, 医学研究科, 助手 (70301273)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
川口 義弥 京都大学, 医学研究科, 助手 (60359792)
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Keywords | 神経系 / 発生 / 神経細胞異動 / 運命決定 / 変異マウス / 小脳 / 大脳皮質 / 転写因子 |
Research Abstract |
我々は成体において、小脳皮質の全ての領域を欠失し、よろめく、頻繁に転倒するなどの小脳失調性症状を示す、新たな突然変異マウスcerebellessを得た。連鎖解析などから、膵臓の発生に関与するbHLH転写因子をコードするPtfla(pancreas transcription factor la)遺伝子を原因遺伝子として同定した。様々な解析から、全ての種類の小脳GABA作動性神経細胞が小脳脳室帯のPtflaを発現する神経上皮細胞由来であり、逆にグルタミン酸作動性神経細胞はPtflaを発現しない(恐らくは菱脳唇の)神経上皮細胞由来であることが明らかになった。以上からPtf1aが小脳GABA作動性神経細胞の発生を司っていることを過去に明らかにしていた(Hoshino et al., Neuron2005)。 そこで、我々の研究成果を、最近報告されたMath1遺伝子のlineage trace解析の結果(Neuron 48,117-24 & 31-43)と考え合わせることによって、右図のような小脳発生に関する新たなモデルを提唱した(Hoshino, The Cerebellum,2006)。すなわち、小脳の神経上皮がPtf1aおよびMath1という二種類のbHLH型転写因子によって脳室帯および菱脳唇へと領域化され、その結果としてそれぞれの領域からGABA作動性神経細胞およびグルタミン酸作動性神経細胞が生み出される、というモデルである。 さらに、この転写因子による脳の領域化モデルが、小脳以外の脳にも当てはまるかどうかを検証しようとした。発生途上の後脳神経管の神経細胞を生み出す部分としてはMath1発現領域が最背側であるが、Ptf1aはそれよりやや腹側の領域で発現していることがわかった。Ptf1a-creノックインマウスを用いたlineage trace解析から、下オリーブ核やそのほか様々な神経核がそのPtfla発現領域から生み出されてきていることを見いだした。また、それらはいずれもMath1発現領域から生み出される神経核とはオーバーラップしないため、後脳神経管においてもMath1とPtflaによって腹背軸に沿った神経上皮の領域化がなされていることが示唆された。現在、Ptf1aがこれらの神経核の発生に果たす役割について調べている。
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