2006 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
18022026
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Research Institution | Nara Institute of Science and Technology |
Principal Investigator |
高橋 淑子 奈良先端科学技術大学院大学, バイオサイエンス研究科, 教授 (10183857)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
齋藤 大介 奈良先端科学技術大学院大学, バイオサイエンス研究科, 助手 (90403360)
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Keywords | 神経冠細胞 / 副腎 / 細胞移動 / 髄質細胞 / 皮質細胞 / SF1 / TH |
Research Abstract |
高次機能をつかさどる神経ネットワークの構築には、初期発生過程において、神経細胞がダイナミックに移動して空間的に正しく配置されることが重要である。末梢神経の前駆体である神経冠細胞(Neural Crest:神経堤細胞ともいう)は、神経管背側部を離脱後、サブタイプによって決められたルートに沿って体内を移動し、目的地に辿り着いた後、その場所特異的な神経節を形成する。しかしながら、神経冠細胞の体内移動マップが提唱されてすでに30年以上が経過しているにもかかわらず、その移動のメカニズムはほとんど謎のままである。 本研究では、神経冠細胞の移動の分子機構を解明すべく、副腎の形成に注目した。初期副腎は、髄質と皮質という2種類の細胞種によって構成される単純な組織である。髄質は神経冠細胞より、また皮質は体腔中胚葉より由来する。つまり両者とも、まずは本来の副腎とは離れた場所に出現し、その後副腎領域まで移動し、最終的に両者が会合する。また神経冠細胞の中でも髄質前駆体は、脊髄神経節や交感神経節を作るサブタイプよりもさらに長距離にわたって移動することから、さまざまな分子操作やその解析が行いやすい。 本研究では、まずトリ胚操作を用いて、予定皮質領域を同定した。また、体腔中胚葉の細胞内に、直接的に遺伝子を導入する方法論を確立した。次に、髄質と皮質のどちらが両者の会合をリードしているかについて調べるために、皮質を異所的につくることを試みた。この目的のために、副腎に発現することが知られている転写因子を、予定皮質細胞内に強制発現させた。結果、本来の副腎の近傍に、新たな皮質様の構造が異所的につくられた。驚くべきことに、これらの異所皮質の近傍に、副腎髄質のマーカーTH陽性細胞が観察された。加えて、これらのTH陽性細胞は、神経冠細胞由来であることを確認した。逆に、神経冠細胞は皮質細胞の移動にはあまり関与していないらしい。これらのことから、副腎形成の場合には、皮質組織が神経冠細胞の移動をガイドしていることが示された。現在、皮質細胞による「ガイド分子」の実態を探索している。
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Research Products
(9 results)