2006 Fiscal Year Annual Research Report
中枢神経系の発生過程における神経幹細胞の運命決定機構の解析
Project/Area Number |
18022033
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
田賀 哲也 熊本大学, 発生医学研究センター, 教授 (40192629)
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Keywords | 神経幹細胞 / 運命決定 / 細胞増殖 / 細胞分化 / シグナル伝達 / β-catenin / GSK3β / Notch |
Research Abstract |
中枢神経系を構成するニューロン、アストロサイト、オリゴデンドロサイトは、神経幹細胞が分化の運命決定を受けてそれぞれの特性を備えた細胞へと成熟する。神経幹細胞の分化の運命付けの過程には、多能性を維持する機構、分化の運命付け誘導の機構、他の細胞種にならない運命付けの排他性の機構、運命付けの固定と維持の機構のそれぞれが重要であり、脳機能構築の理解にはこれらの神経幹細胞運命決定機構の解明が不可避の課題である。本年度のこの研究では特に、ニューロン分化抑制作用を発揮することで神経幹細胞の運命付けに寄与するとされるNotchシグナルに焦点を当てて取り組んだ。実験にはマウス胎仔終脳由来神経上皮細胞をbFGFで培養することで得られる神経幹細胞画分を用いた。この神経幹細胞培養系にNotch1シグナルを活性化させる(Notch1の細胞内領域を強制発現する)ことによるHes1プロモーターの活性化を、bFGFシグナルが増強することがわかった。また、この増強作用はPI_3kinase(PI_3K)-Akt-GSK3β経路を介していた。興味深いことに、GSK3β不活性化に伴い安定的に核に存在するようになるβ-catenin分子が、Nothc1分子の細胞内領域(活性型Notch1分子)と複合体を形成していることや、この複合体にさらに2種類の転写共役因子が同時に関わっていることも明らかになった。これまでに行った関連する研究の成果を併せて考察すると、一連の知見は、bFGFシグナルがWnt3aシグナルやNotchシグナルと連携して神経幹細胞の運命決定に関わっていることを示したという点で大変興味深い。
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