2006 Fiscal Year Annual Research Report
酸化ストレスによるBACE1発現変化とアミロイドβ蛋白との相関に関する解析
Project/Area Number |
18023008
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
玉岡 晃 筑波大学, 大学院人間総合科学研究科, 助教授 (50192183)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
望月 昭英 筑波大学, 大学院人間総合科学研究科, 講師 (40301080)
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Keywords | 老化 / ストレス / 痴呆 / 脳神経疾患 / 内科 |
Research Abstract |
[目的]アルツハイマー病(AD)脳の病理学的特徴の一つはアミロイドβ蛋白(Aβ)の広範な沈着であり、AβのN末端を切断するBeta-site APP-cleaving enzyme 1 (BACE1)がAβの産生に関与している。また、BACE1はin vitroでAβ1-40やAβ1-42からAβ1-34を産生することが報告されている。本研究では抗ヒトBACE1抗体を作成し、その反応性、特異性を調べるとともにヒト脳においてBACE1を解析し、脳内細胞における発現局在を調べ、対照脳及びおよびAD脳においてその発現量を比較した。また、ADの病態に酸化ストレスが関与していることが推察されているため、培養細胞系に酸化ストレスを加えることによりBACE1の産生量が変化するか否かを検討した。更に、BACE1によって生成されるAβの断片Aβ34の存在様式をAD脳において検討した。[方法]ヒトBACE1の合成ペプチドをウサギに免疫し、ポリクローナル抗体を作成した。ヒトBACE1を一過性に発現させたHela細胞の膜画分をポジティブコントロールとして、抗体の特異性や感度をウェスタンブロット法にて調べた。また、ヒト対照脳およびAD脳を抽出し、抗BACE1抗体と抗MAP2抗体にてWestern blottingを行い、densitometerで濃度を測定し、各蛋白を定量した。抗BACE1抗体と抗MAP2抗体、抗GFAP抗体で免疫二重染色を行ない、ヒト脳内のBACE1の分布を解析した。また、HTB-148/H4細胞に20μMのH_2O_2を加え、3および6時間処理したものと未処理のものを溶解バッファーにてホモジェナイズした後、各サンプルの蛋白量を一定にした。作成した抗BACE1抗体を用いてWestern blotting後、得られたバンドの蛋白量をdensitometerにて測定比較した。ラット初代培養神経細胞を用いて同様な実験を行った。Aβ34の存在様式の検討のため、AD患者の凍結剖検脳をリン酸緩衝液、SDS、ギ酸にて連続的に抽出し、免疫沈降、ウエスタンブロット、質量分析及びアミノ酸シークエンスを組み合わせて各画分に含まれるAβ分子種を解析した。[結果および考察]抗BACE1抗体にてヒト脳に約70kDaの全長型BACE1を同定した。AD脳の免疫二重染色でBACE1は神経細胞に発現しており、グリア細胞には認めなかった。対照群と比較してAD群ではBACE1の発現量の低下が認められたが、AD脳では神経細胞当たりのBACE1量を反映するBACE1/MAP2値は対照群より有意に上昇していた。HTB-148/H4細胞での解析では、BACE1の蛋白量は未処理のものと比較して3時間で1.25倍、6時間で1.37倍となっており、酸化ストレスによりBACE1発現の増加傾向がみられた。ラット初代培養神経細胞では、hemeoxygenase-1の増加が生じる条件でもBACE1の変化は認められなかった。また、BACE1が生成するAβ34はPBS可溶性画分に存在し、不溶性画分には認められなかった。[結論]ヒト脳において全長型BACE1の存在が示された。ヒト脳ではBACE1は神経細胞に発現しており、AD脳では神経細胞あたりのBACE1が増加していることが示唆された。また、酸化ストレスとBACE1発現との関係は今後更に検討する必要がある。BACE1により生成されるAβ34は可溶性を獲得しており、BACE1がAβの重合性や神経毒性の軽減にも作用する可能性が考えられた。BACE1のAβ産生能がReticulonにより抑制されるという報告もあり、今後BACE1活性の調節因子やBACE1発現時のAβ40、Aβ42、Aβ34の動態に関して、更に解析する必要がある。
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Research Products
(7 results)