2006 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
18023015
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
西澤 正豊 新潟大学, 脳研究所, 教授 (80198457)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
原 賢寿 新潟大学, 医歯学総合病院, 助手 (10377195)
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Keywords | aprataxin / ataxia / EAOH / AOAl / single strand DNA break / DNA break repair / DNA 3'block / ARSACS |
Research Abstract |
「眼球運動失行と低アルブミン血症を伴う早期発症型失調症(EAOH/AOAl)」は、幼少期における眼球運動失行と進行期における末梢神経障害、低アルブミン血症を特徴とし、わが国でみられる劣性遺伝性脊髄小脳変性症の約半数を占める重要な疾患である。病因蛋白質aprataxin(APTX)は、核酸の加水分解反応を触媒するhistidine triadモチーフを有する核蛋白で、一本鎖DNA損傷の修復過程に関与していると推定されている。 今年度はまず、一本鎖DNA損傷修復における損傷3'末端のプロセッシングに、APTXが関与しているか否かを明らかにすることを目的として、組み換えヒト全長型APTX蛋白質を作製し、3'末端に種々の修飾基を有する合成DNAを基質として、酵素学的検討を行った。その結果、全長型APTXはDNA 3'末端のリン酸基とphosphoglycolate(PG)基の加水分解反応を触媒する活性、すなわち、DNA 3'phosphatase活性および3'PG hydrolase活性を有すること、およびDNA polymeraseとligaseの共存下で、APTXは3'ブロックを伴う一本鎖DNA損傷を修復可能であることを証明した。さらに、EAOH/AOAlの疾患関連変異体ではこの3'ブロック除去活性が失われることを確かめた。これらの結果は、APTXが3'ブロックの除去活性を通して一本鎖DNA損傷修復に直接的な役割をもっていること、また、3'ブロックを伴う一本鎖DNA損傷が修復されずに蓄積することが、EAOH/AOAlの病態に深く関係していることを示している。 次に、APTXがin vivoにおいても一本鎖DNA損傷に対する修復活性を示すか否かを確認するために、APTXノックアウトマウスを作成した。その線維芽細胞の初代培養系において、一本鎖DNA損傷を定量化できるalkali comet assay法を用いて、酸化ストレスやトポイソメレースI阻害剤などの一本鎖DNA損傷ストレスを加えた場合に、APTX欠損線維芽細胞はこうしたストレスに対してより脆弱であるか否かを検討した。その結果、線維芽細胞の初期培養系では、一本鎖DNA損傷ストレスに対する脆弱性にはAPTX欠損の有無による有意な差を見出せなかった。そこで現在、APTXノックアウトマウスに由来する小脳顆粒球細胞の初代培養系を用いて、APTXが欠損した神経細胞における一本鎖DNA損傷ストレスに対する脆弱性を検討している。またわが国における劣性遺伝性脊髄小脳変性症ではEAOH/AOAlに次ぐ頻度で認められるARSCS家系の解析から、sacsin遺伝子の新たな変異と新たな表現型を見出した。
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Research Products
(3 results)