2006 Fiscal Year Annual Research Report
長鎖アミロイドβ生成の調節メカニズム解明とその抑制法開発
Project/Area Number |
18023019
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Research Institution | Shiga University of Medical Science |
Principal Investigator |
西村 正樹 滋賀医科大学, 分子神経科学研究センター, 助教授 (40322739)
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Keywords | アルツハイマー病 / プレセニリン / γセクレターゼ / アミロイドβ / CRB2 |
Research Abstract |
アミロイドβペプチド(Aβ)のなかでも病原性の高い長鎖Aβの脳内生成レベルを制御する内因性メカニズムの解明からアルツハイマー病の新たな治療ストラテジーを開拓することを目的とする。今年度はショウジョウバエのNotchシグナル伝達に対し負のフィードバックに働くCrumbs分子のγセクレターゼに対する機能を解析した。 Crumbsのヒト相同分子のなかで脳における発現レベルが高いCRB2の機能解析を行った。CRB2は培養哺乳類細胞において分子量約170kDaの膜貫通型糖タンパク質として発現した。CRB2はAPPを恒常的に発現するHEK293細胞から分泌されるAβレベルを減少させた。逆に、SH-SY5Y細胞の内在性CRB2をsiRNA処理により減少させると分泌Aβは増加した。しかし、総Aβ中の長鎖Aβの比率には明らかな変化はなかった。細胞の膜分画を用いてγセクレターゼによるAPPのε切断反応をみるとCRB2による抑制が認められ、またCRB2を恒常的に発現させた細胞株では基質であるAPP-C末端断片の細胞内蓄積がみられたことから、CRB2はγセクレターゼ活性を阻害すると考えられた。γセクレターゼ複合体の構成タンパク質とCRB2との相互作用を免疫共沈にて確認したところ、CRB2はpresenilin,nicastrin,APH-1と結合することが判明した。CRB2特異抗体による免疫組織化学において大脳皮質と海馬のニューロンに局在が認められ、CRB2がアルツハイマー病の病態に関与し得ることが示唆された。 CRB2には長鎖Aβ特異的な生成抑制機能は認められず、またin vivoの生理的な条件下でのγセクレターゼ阻害についてはより慎重な検討が必要であるが、CRB2機能の解明から内因性γセクレターゼ活性制御機構の一側面が明らかにできると期待される。
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