2006 Fiscal Year Annual Research Report
統合失調症のカルシニューリン仮説に基づいた統合失調症発症メカニズムの解明
Project/Area Number |
18023022
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
宮川 剛 京都大学, 医学研究科, 助教授 (10301780)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高雄 啓三 京都大学, 医学研究科, 助手 (80420397)
遠山 桂子 京都大学, 医学研究科, 研究員(科学技術振興) (20378722)
扇野 寛史 京都大学, 医学研究科, その他(教務補佐員) (20378665)
大迫 清子 京都大学, 医学研究科, その他(教務補佐員) (90402875)
|
Keywords | 遺伝子 / 行動学 |
Research Abstract |
統合失調症や双極性感情障害、うつ病等の精神疾患はいずれも高い生涯罹患率を有し、薬物療法が進歩した今日でも難治例は多い。とくに統合失調症は精神科入院患者の約6割を占め、医療費の高騰の面からも効果的な治療薬の研究開発が重要であるが、そのためには精神疾患の病態の解明の研究をさらに進める必要がある。研究代表者らはカルシウム依存性脱リン酸化酵素であるカルシニューリン(CN)の前脳特異的KOマウスが、作業記憶障害、注意障害、社会的行動の障害など統合失調症様の行動異常を示すことを発見し、患者のゲノムDNAサンプルを用いた関連解析では、CNのサブユニットの遺伝子が統合失調症と強く相関することを示すことにより、CNが統合失調症の感受性遺伝子であることを明らかにした。研究代表者らはCNの信号伝達経路に関与する遺伝子をはじめとして、脳に発現する各種遺伝子の遺伝子改変マウスを用いて行動テストバッテリーによる表現型解析を行っている。これにより、精神疾患様行動パターンを示すマウスを選定するだけでなく、得られた精神疾患モデルマウスの妥当性を、精神疾患の患者サンプルを用いて検証し、またモデルマウスの脳の解析を通じて精神疾患の病態解明を図る。 これまでこの戦略により、CNが関与する信号伝達経路の分子の遺伝子改変マウスで、精神疾患様の表現型を示す系統を複数得ることができた。1つの系統では不安の顕著な低下と社会的行動の増加がみられ、当該遺伝子の異常がダウン症の発症メカニズムに関与していることを明らかにした。この結果はNatureにArticleとしてオンラインで発表された。また、作業記憶に顕著な障害を示した1系統については、著しい攻撃性、活動性の亢進、不安様行動の著しい低下があり、このマウスの活動性には2-3週間程度のゆっくりとした周期的な大きな波があった(ホームケージでの活動解析)。このような「周期的な気分の波」を示すマウスは報告例がなく、気分障害など何らかの精神疾患のモデル動物になると考えられる。このマウスでジーンチップによる遺伝子発現解析や、組織学的、生理学的解析を進めたところ、脳の一部が未成熟であることが分かってきている。
|