2006 Fiscal Year Annual Research Report
脳内ノルアドレナリン神経機能の非侵襲的分子イメージングのための分子プローブの開発
Project/Area Number |
18023023
|
Research Institution | University of Fukui |
Principal Investigator |
清野 泰 福井大学, 高エネルギー医学研究センター, 助教授 (50305603)
|
Keywords | 機能性精神疾患 / 分子イメージング / プローブ開発 / ノルアドレナリン神経 / ノルエピネフリン・トランスポータ |
Research Abstract |
機能性精神疾患の病因の1つがノルアドレナリン(NA)神経機能の変化であるとする報告は数多くある。しかし、他の脳神経疾患と比較して、機能性精神疾患の病態解明が遅れている理由の1つに、その病態解明には必須であると考えられる患者のNA神経機能を非侵襲的にイメージングできないことが挙げられる。そこで、機能性精神疾患領域で強く望まれてきたNA神経の分子イメージングを核医学的なアプローチにより達成することを目的とする分子イメージングプローブを開発し、その有効性を評価することを計画した。分子イメージングプローブのターゲットとしては、ノルエピネフリン・トランスポータ(NET)を選択した。このNETをターゲットとする分子イメージングプローブとして(2S,αS)-[^<123>I]-2[α-(2-iodophenoxy)benzyl]molpholine((S, S)-IPBM)を開発し、臨床応用にむけた候補プローブとして、本年度は動物用SPECT装置を用いて、(S, S)-[^<123>I]-IPBMによる脳内NETの非侵襲的イメージングが可能であるかを検討した。さらに、うつ病モデルラットを用いて、脳局所でのNETの発現量の変化を測定し、その変化を(S, S)-IPBMを用いることにより検出可能であるかを検討した。 イメージング実験はコモン・マーモセットを用いて行った。得られたイメージを定量解析した結果、視床で最も集積が高く、線状体で最も低くなりNETの発現量に相関した定量値を得ることができた。また、(S, S)-IPBM投与後にNET結合剤を投与すると、その集積はNETの発現の少ない線状体のレベルまで低下することもイメージング可能であった。以上の結果より、(S, S)-IPBMを用いることにより、非侵襲的にNETの発現をイメージング可能であることが示された。疾患モデル動物を用いた検討としては、代表的な機能性精神疾患であり、ヒト剖検脳においてNETの減少が報告されているうつ病を選択した。うつ病のモデルとしては、汎用性に優れた薬物性モデルであるレセルピン慢性投与モデルを選択した。このモデルにおいて、青斑核や視床前核おいてNET発現量が有意に低下していることを見いだした。さらにNET発現量の変化に対応して(S, S)-IPBMの集積が変化することも確認できた。このことより(S, S)-IPBMがうつ病におけるNETの発現変化を鋭敏に検出できることが示唆された。
|