2006 Fiscal Year Annual Research Report
双極性障害における小胞体ストレスおよびミトコンドリア機能障害の意義についての研究
Project/Area Number |
18023039
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
加藤 忠史 独立行政法人理化学研究所, 老化・精神疾患研究グループ, グループディレクター (30214381)
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Keywords | 双極性障害(躁うつ病) / WFS1 / 小胞体ストレス |
Research Abstract |
我々は以前、一卵性双生児双極性障害不一致例のリンパ芽球における遺伝子発現解析により、XBP1が患者で低下していることを見出し、XBP1の神経系細胞における標的遺伝子を探索したところ、精神疾患関連遺伝子として注目されていたWFS1が見出された。WFS1は小胞体ストレスに関連する蛋白質であることが知られており、WFS1変異による疾患であるウォルフラム病の患者の脳内では、ミトコンドリアDNA欠失が蓄積していることが報告されている。そこで、本研究では、XBP1-WFS1系が脳内で果たす役割を検討するため、WFS1ノックアウトマウスの解析を行った。WFS1ノックアウトマウスをC57BL6マウスと8世代以上掛け合わせ、若年および高齢のWFS1ノックアウトマウスおよび野生型マウスの海馬を摘出し、RNAを抽出し、逆転写を行ってcDNAを作成し、蛍光ラベルしたcRNAを、GeneChip(マウス430 2.0アレイ)実験に供し、遺伝子発現解析を行った。得られたデーターをGeneSpringソフトウェアを用いて解析し、WFS1ノックアウトマウスにおいて発現量が変化している遺伝子を探索した。その結果、加齢マウスの方が遺伝子発現差異が大きく、WFS1を欠くことによる脳内遺伝子発現差異への影響は、加齢の影響を受けると考えられた。また、WFS1ノックアウトマウスおよび野生型マウスの脳を還流固定し、切片を作成後、ヘマトキシリンエオジン染色により形態観察を行った。視察的に明らかな変化は見られなかったが、海馬の細胞構築が異なる傾向が見られたため、対象数を増やして検討を進めている。また、WFS1抗体を作成し、野生型マウスにおいて、その分布を検討した。その結果、WFS1蛋白質の分布は、ラットで報告されている分布とよく一致し、いわゆる大脳辺縁系に多く発現していることが明らかとなった。
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