2006 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
18028002
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
野村 一成 北海道大学, 大学院理学研究院, 教授 (80128579)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
市村 晃一 北海道大学, 大学院理学研究院, 助手 (50261277)
松永 悟明 北海道大学, 大学院理学研究院, 講師 (10222308)
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Keywords | 超伝導 / スピン密度波 / トンネル顕微鏡 / 分子性導体 |
Research Abstract |
2次元的電子バンドを持つ有機超伝導体κ-(BEDT-TTF)_2Xにおいて、電子相関と超伝導状態の関わりを明らかにすることを目的に、反強磁性絶縁相との境界に近い超伝導相に位置するκ-(BEDT-TTF)_2Cu[N(CN)_2]BrにおいてSTM分光測定を行った。 この系では部分重水素置換により電子相関の強さを細かく制御できるが、水素体κ-(BEDT-TTF-d[0,0])_2Cu[N(CN)_2]Brおよび部分重水素化したκ-(BEDT-TTF-d[2,2])_2Cu[N(CN)_2]Brについて重点的に調べた。特に、d[0,0]塩では、結晶の側面での角度分解STM分光の測定に初めて成功した。その系統的な角度依存から、この超伝導がκ-(BEDT-TTF)_2Cu(NCS)_2と同様にd(x^2-y^2)の対称性を持つ4波の超伝導であることが明らかになった。同時に、超伝導ギャップのノード方向で、ゼロバイアスにおいてトンネルコンダクタンスが発散的に増加するゼロバイアス異常を観測した。この現象が2次元有機超伝導体のノードの方向で見出されたのは今回が初めてであるが、kappa -(BEDT-TTF)_2Xにおいて超伝導ギャップにノードがあることのより直接的な証拠を与えるものである。d[2,2]では、ノードの近辺のみであるが側面での角度分解測定に成功し、さらにゼロバイアス異常の観測も加えて、d[0,0]塩と同様にd(x^2-y^2)の対称性が明らかになった。これらの結果から、κ-(BEDT-TTF)_2Cu(NCS)_2からd[0,0]塩、d[2,2]塩へと電子相関は増大するが、超伝導状態はCu(NCS)_2塩からほぼ連続的であることが示唆された。d[3,3]塩へ測定を拡張し、電子相関及び2量体化の強さとギャップのノード方向との関係を明らかにすることが今後の課題である。
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Research Products
(5 results)