2006 Fiscal Year Annual Research Report
新規πd系DMET塩における金属絶縁体転移と物性開拓
Project/Area Number |
18028012
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
伊東 裕 名古屋大学, 大学院工学研究科, 助教授 (10260374)
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Keywords | 分子性導体 / 金属絶縁体転移 / フェルミ面 / πd相互作用 / 異方的電気伝導 / 超伝導転移 / 一軸性圧縮 |
Research Abstract |
局在d電子スピンをもつ陰イオンをドナー分子と組み合わせたπ-d系有機伝導体は、電荷とスピンの相乗効果によって生まれる伝導と磁性の新しい機能性の舞台として注目を集めている。DMETはTMTSFの半分とBEDT-TTFの半分を組み合わせた非対称ドナーであり、TMTSFの1次元性とBEDT-TTFの2次元性の特徴を併せ持ち、陰イオンの局在スピンとの相互作用に興味がもたれる。今年度は2価正四面体イオンを含む(DMET)_4MCl_4(TCE)_2(M=Mn,Co,Cu,Zn)について主に電気伝導、ESRにより、金属絶縁体転移の起源と低温電子物性の解明を進めた。4つの塩はすべて同型の構造をもち、平板上フェルミ面が折りたたまれてできた半金属的フェルミ面をもつ。磁気抵抗測定の結果、金属絶縁体転移の起源はフェルミ面の不完全ネスティングに基づいたSDW転移であると考えられることがわかった。この低温SDW状態に対して局在d電子スピンがどのような影響を与えるかに注目し研究を進め、(DMET)_4CuCl_4(TCE)_2においては、伝導面内方向は半導体的であるが、伝導面間方向は金属的な振舞いを示す特徴的な異方的伝導を見出した。 また、クロム錯体を陰イオンとする(DMET)_2Cr(L)(NCS)_4(L=phen,(isoq)_2)について、電気伝導とESR測定により、低温電子状態の研究を進めた。特にL=(isoq)_2について約20Kでの非磁性転移を見出した。 一方、κ型BEDT-TTF塩に次ぐ高い超伝導転移温度T_cをもつβ-(BDA-TTP)_2SbF_6についてT_cの一軸性圧縮依存性を調べた。伝導面間方向および伝導面内のドナー積層方向への圧縮でT_cが0.5K程度上昇することを見出した。T_cの変化はT_c直上の常伝導電気抵抗値と相関があることがわかった。
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