2007 Fiscal Year Annual Research Report
高圧下強磁場電子スピン共鳴と磁気光学測定によるナローギャップ有機半導体の研究
Project/Area Number |
18028017
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
太田 仁 Kobe University, 自然科学先端融合研究環分子フォトサイエンス研究センター, 教授 (70194173)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
櫻井 敬博 神戸大学, 研究基盤センター, 助教 (60379477)
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Keywords | ゼロギャップ半導体 / 磁気光学測定 / 高圧 / 強磁場 / ディラックコーン |
Research Abstract |
我々が開発した圧力セルの特徴は,セル本体にNiCrAlを使用し,ピストンに電磁波の透過が可能で強度があるジルコニアを採用することによって1.1GPaの圧力発生が可能となった。この圧力セルを用いて高圧下磁気光学測定をおこなった。最終的なねらいはα-(BEDT-TTF)_2l_3であるが,この系はゼロギャップ状態にするのに1GPa以上の圧力をようするので,同様に0.5GPa付近の圧力下でゼロギャップ状態になると考えられているα-(BETS)_2l_3で磁気光学測定を試みた。通常のサイクロトロン共鳴は周波数と磁場が比例する依存性を示すが,Dirac cone型のバンド構造では非線形な依存性が期待される。したがって,周波数と磁場の関係が非線形なサイクロトロン共鳴の依存性が観測されれば,Dirac cone型のバンド構造の存在を実験的に検証することが可能となる。昨年度は,モザイク的にα-(BETS)_2l_3単結晶を並べ,試料間を通過する時に電磁波が試料と相互作用することを期待したが,圧力セルの内径が3mmと小さいため有効な相互作用がえられず,サイクロトロン共鳴は観測されなかった。そこで,本年度はα-(BETS)_2l_3単結晶を紙やすりで削ることにより厚さの薄い試料を作成して,電磁波が透過可能な状況を実現してサイクロトロン共鳴の観測を試みた。試料の厚さを0.1mmにちかづけたが,圧力下でサイクロトロン共鳴は観測されなかった。この原因を検討した結果,以下のような可能性が考えられる。100GHzから360GHzの領域で観測を試みたが,まだ試料を電磁波が透過するには厚すぎる可能性。また,最近の磁場下の電気伝導測定の解析から,α-(BETS)_2l_3のフェルミ速度が当初の予想の10_4m/sより大きいため,サイクロトロン共鳴をTHz領域で観測しなければいけない可能性。今後,より薄い試料を準備して,もっと高い周波数で観測を試みる計画である。
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