2006 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
18028024
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
高橋 一志 東京大学, 物性研究所, 助手 (60342953)
|
Keywords | 分子性導体 / 磁性伝導体 / 安定有機ラジカル / スピンクロスオーバー錯体 / 外場応答性 / 分子性固体 / 複合物性 / 双安定状態 |
Research Abstract |
磁性分子性導体はπ電子ドナーと孤立した遷移金属磁性アニオンからなる伝導体がほとんどであるが、このような従来のものとは異なる新しいタイプの磁性伝導体の可能性を検討するため、分子内での磁気的相互作用が期待される安定有機ラジカルを共有結合させたπ電子ドナーによる磁性分子性導体の開発を検討した。本研究では安定有機ラジカルPROXYLラジカルをπ電子ドナーに縮環させることで立体障害の小さく剛直なPROXYL-STF誘導体を分子設計し、その合成法を確立した。安定有機ラジカルを有するπ電子ドナーからなるカチオンラジカル塩や電荷移動錯体は一般に結晶性が悪く、結晶構造の明らかな錯体の例は非常に少ない。PROXYL-ET-STFはTCNQF_4との電荷移動錯体を形成し、安定有機ラジカルを持つドナーの電荷移動錯体として初めて結晶構造解析に成功した。これはPROXYL-STF誘導体による結晶性磁性伝導体の可能性を期待させる結果である。 局在スピンとして鉄スピンクロスオーバーイオンを有する外場応答型磁性分子性導体の開発を検討した。協同的なスピン転移を示す鉄錯体[Fe^<III>(qsal)_2][Ni(dmit)_2]・2CH_3CNを電解酸化することで得られた伝導性錯体[Fe^<III>(qsal)_2][Ni(dmit)_2]_3・CH_3CN・H_2Oは磁気測定と抵抗率測定の温度変化において同じ温度領域にヒステリシスが観測された。これはスピンクロスオーバーによる構造変化による化学圧変化により伝導性の双安定状態が実現されたことを示唆している。また、この伝導性錯体は極低温で光誘起スピン転移現象を示した。これらの結果は外場による伝導性の制御をスピンクロスオーバー現象により初めて達成できた例であり、今後分子性固体の物性制御に対して双安定物質を導入が有効な手段であることを明らかにできた。
|
Research Products
(6 results)