2006 Fiscal Year Annual Research Report
水素誘起構造緩和およびパルス通電結晶化による金属ガラスの安定性と結晶化の研究
Project/Area Number |
18029010
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
水林 博 筑波大学, 大学院数理物質科学研究科, 教授 (40114136)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
谷本 久典 筑波大学, 大学院数理物質科学研究科, 助教授 (70222122)
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Keywords | 金属ガラス / 結晶化 / 水素誘起構造緩和 / 安定性 / 局所構造 / 添加元素の効果 |
Research Abstract |
Zr-Cu系金属ガラスでは、バルク金属ガラス(BMG)とマージナル金属ガラス(MMG)でパルス通電結晶化挙動は異なっている。一方、BMGとMMGを問わず、水素誘起構造緩和挙動およびパルス通電結晶化挙動の両面から、Zrの組成比が50-55at%のグループ(Zr_<50-55>グループ)とZrの組成比が<50at%あるいは>55at%のグループ(Zr_<<50-55<>グループ)に分けて整理でき、金属ガラスの安定性と結晶化を理解する上で重要な要素がガラス構造に内在することを示唆する。この観点から、水素内部摩擦ピークおよびパルス通電結晶化挙動を調べ、以下の結果を得た。水素内部摩擦ピーク温度(T_p)およびピーク高さ(Q^1_p)の水素濃度依存性はそれぞれT_p=ΔT_pexp(-C_H/τ_H)+T_<p0>、Q^1_p=ΔQ^1_p(C_H/τ_H)^<1/2>で表される。ΔT_pは緩和終状態からの距離、τ_Hは水素誘起構造緩和の耐性の指標であり、水素添加により金属ガラスにおける4面体構造の異方性が等方性へ変化することを示唆する。τ_H大きいZr_<50>グループは、Al添加でΔT_pは大きく増大し、AlとNi添加でΔT_pとτ_Hが共に増大した。すなわち、Al、Ni添加により熱的安定性が高くなる一方でΔT_pが大きくなる。また、パルス通電結晶化は、結晶構造からの乖離度が低い局所的ガラス構造が、原子の集団運動励起により無拡散的に結晶化する現象であると推測できる。Zr_<50>Cu_<50>を基準にすると、パルス通電結晶化の電流密度依存性はZr_<50>グループでは定性的に似ているが、結晶化率は、Al添加によりかなり低下し、さらにNiを添加すると結晶化率は大きく低下する。これらを総合すると、局所的ガラス構造の結晶構造からの乖離度はAl添加、AlとNi添加の順に大きく、乖離度が熱的安定性の一因であることを示唆する。また、関連研究として、純金属ガラスに係る知見を目的に、結晶粒界層が非晶質と類似した挙動を示す金ナノ結晶ならびに銅ナノ結晶薄膜の力学的挙動を調べた。
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