2006 Fiscal Year Annual Research Report
構造変化における蛋白質のエネルギー地形階層性と水和の役割
Project/Area Number |
18031006
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
城地 保昌 東京大学, 分子細胞生物学研究所, 助手 (30360415)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
北尾 彰朗 東京大学, 分子細胞生物学研究所, 助教授 (30252422)
|
Keywords | 生物物理 / 蛋白質 / 立体構造変化 / 溶媒効果 / 分子シミュレーション / 中性子散乱 |
Research Abstract |
本研究では、分子シミュレーションと中性子散乱により、蛋白質のエネルギー地形と水和の役割を研究している。本年度は以下の成果を得た。 1.Staphylococcal Nuclease結晶(dry状態、wet状態)の分子動力学計算を行い、それぞれの結果から計算される中性子散乱強度を低温(100K)と常温(300K)で比較した。その結果、低温では蛋白質のボゾンピークが水和により高振動側にシフトすることが明らかになった。wet状態では、蛋白質と水の運動のカップリングにより、dry状態と比べて細かい微細構造が、蛋白質のエネルギー面に形成されるためにこのようなシフトが起こる。一方、常温では、dry状態でボゾンピークが観測されるのに対し、wet状態では観測されない。これは、wet状態では、dry状態に比べて準安定構造間をジャンプする非調和な運動が頻繁に起こっていることを示す。 2.中性子弾性散乱では、散乱強度を散乱ベクトルQの関数として解析することで、蛋白質の平均2乗原子揺らぎの平均値や原子依存性、非調和運動の情報を調べることが、理論上可能である。しかし、蛋白質の内部運動に非調和運動が存在しても、弾性散乱強度のQ依存性にはその情報がほとんど含まれないことが、計算機実験により明らかになった。つまり、原子揺らぎの平均値と原子依存性のみが支配的な因子であるして、実験データを解析することが妥当である。 3.基質(NAD+)結合に伴い、アルコール脱水素酵素が「開」構造から「閉」構造に遷移する素過程をコンピュータ上に再現することに成功した。このトラジェクトリを解析することで「開」→「閉」の構造遷移のためには、まずループ290-300が、「閉」構造と同じコンフォーメーションをとらないといけないこと、ARG369とNAD+の相互作用が構造転移初期に重要な役割を果たすこと、等が明らかになった。
|
Research Products
(5 results)
-
[Journal Article] Dynamical heterogeneity of protein dynamics studied by elastic incoherent neutron scattering and molecular simulations2006
Author(s)
Nakagawa, H., Tokuhisa, A., Kamikubo, H., Joti, Y., Kitao, A., Kataoka, M.
-
Journal Title
Materials Science and Engineering : A 442
Pages: 356-360
-
[Journal Article] Hydration-coupled protein boson peak measured by incoherent neutron scattering2006
Author(s)
Nakagawa, H., Kataoka, M., Joti, Y., Kitao, A., Shibata, K., Tokuhisa, A., Tsukushi, I., Go, N
-
Journal Title
Physica B 385-386
Pages: 871-873
-
-
-