2007 Fiscal Year Annual Research Report
構造変化における蛋白質のエネルギー地形階層性と水和の役割
Project/Area Number |
18031006
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
城地 保昌 The University of Tokyo, 分子細胞生物学研究所, 助教 (30360415)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
北尾 彰朗 東京大学, 分子細胞生物学研究所, 准教授 (30252422)
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Keywords | 生物物理 / 蛋白質 / 溶媒効果 / 分子シミュレーション / 中性子散乱 |
Research Abstract |
本研究では、分子シミュレーションと中性子散乱により、蛋白質のエネルギー地形と水和の役割を研究している。本年度は水和状態(h=0.49g protein/g D_2O)と乾燥状態(h=0.09g protein/g D_2O)のStaphylococcal Nuclease結晶の分子動力学シミュレーションを100Kから300Kの6種類の温度で行い、その解析結果から以下の成果を得た。 1.平均2乗揺らぎの温度依存性を水和状態と乾燥状態で比較した結果、水和状態の方が蛋白質のガラス性転移が顕著であることがわかった。水和状態では、300Kで水の平均2乗揺らぎが蛋白質と比べて2桁大きな値をとっており、水が蛋白質ダイナミクスに対して潤滑油の役割を果たしていると考えられる。一方、乾燥状態では、常温で水分子が主に蛋白質分子と水素結合し、お互いの揺らぎを制限している。以上のように、蛋白質のガラス性転移の起源には、蛋白質分子間相互作用と水分子の動きやすさが重要な役割を果たしている。 2.通常の中性子散乱実験では、重水(D_2O)により水和された試料が通常用いられる。軽水素の非干渉性散乱断面積は、その他と比べて2桁大きいため、蛋白質中の軽水素からの非干渉性散乱が支配的になると考えられ、水分子からの散乱は通常無視される。シミュレーション結果から干渉性散乱スペクトルを解析した結果、300Kでは水和状態で水分子の揺らぎが蛋白質と比べて2桁大きいため、水分子(D_2O)からの干渉性散乱が顕著に現れることが明らかになった。一方、常温の乾燥状態、低温(水和、乾燥)では水分子の揺らぎが蛋白質と同程度のため、水分子からの干渉性散乱の寄与は小さい。
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Research Products
(7 results)