2006 Fiscal Year Annual Research Report
タンパク質の「揺らぎ」と機能発現における水分子の役割
Project/Area Number |
18031018
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
村田 幸作 京都大学, 農学研究科, 教授 (90142299)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
三上 文三 京都大学, 農学研究科, 教授 (40135611)
橋本 渉 京都大学, 農学研究科, 助教授 (30273519)
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Keywords | 連鎖球菌 / 細胞外マトリックス / グリコサミノグリカン / ヒアルロン酸リアーゼ / 不飽和グルクロニルヒドロラーゼ / 水和反応 / 反応機構 / X線結晶構造解析 |
Research Abstract |
不飽和グルクロニルヒドロラーゼ(UGL)は、不飽和糖質における非還元末端の不飽和グルクロン酸とそれに結合している糖との間のグリコシド結合を加水分解する。重篤な感染症(肺炎、敗血症や髄膜炎など)を引き起こす病原性連鎖球菌は、病原性因子ヒアルロン酸リアーゼとUGLの協調作用により、宿主細胞の相互作用に重要なグリコサミノグリカン・ヒアルロン酸(細胞外マトリックス)を分解し、宿主細胞に侵入することが示唆されている。本研究では、UGLの反応機構を明らかにすることにより、細菌感染症の治療薬の開発を目的とした。 UGLは、α-グリコシド結合を持つ不飽和糖質を加水分解し、不飽和グルクロン酸を遊離する。本酵素の構造・機能相関を明らかにするため、不活性変異体であるAsp-88のAsn変異体(D88N)の結晶を調製した。SPring-8の放射光を利用して、D88Nの結晶と不飽和コンドロイチン二糖、不飽和ヒアルロン酸二糖および不飽和ゲラン四糖との基質・酵素複合体の立体構造を、1.7〜1.9Å分解能で決定した。また、部位特異的変異解析や反応産物の質量分析などによって、UGLは、従来の糖質加水分解酵素とは異なる活性部位を持ち、以下に示す新規な反応を触媒することを明らかにした。UGLのAsp-149が、一般酸触媒として不飽和グルクロン酸の二重結合(C4=C5)のC4炭素に水素を供与する。次に、Asp-149が、一般塩基触媒として水分子から水素を受け取る。脱プロトン化した水分子は、不飽和グルクロン酸のC5炭素を求核攻撃する。つまり、反応は、グリコシド結合ではなく、二重結合(ビニルーエーテル基)を水和することにより開始される。この水和により、ヘミケタールが生成される。ヘミケタールは不安定であり、直ちにヘミアセタールとなる。ヘミアセタールは、アルデヒドとの平衡によりグリコシド結合が切断され、アルデヒド(不飽和グルクロン酸)と遊離の糖となる。
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Research Products
(6 results)