2006 Fiscal Year Annual Research Report
構造の揺らぎと柔軟性を考慮した溶液内化学反応理論の構築
Project/Area Number |
18031019
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
佐藤 啓文 京都大学, 工学研究科, 助教授 (70290905)
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Keywords | 溶媒和理論 / 液体の積分方程式理論 / エネルギー分配法 / 三次元溶媒分布関数 / 共鳴構造 |
Research Abstract |
溶液内の化学過程を理解するためには、現象を支配している墓本原理である量子化学と統計力学双方の視点が重要である。特に標記の理論を構築して行く上では、両者を結びつける観点が常に必要となる。こうした背景を基に本年度は、(1)高精度で分子の詳細な情報が得られる量子化学計算を様々な意味で粗視化し、(2)量子化学計算との組み合わせが可能で、より効率良い液体の統計力学理論の開発を行い、以下の成果を得た。 (1)分子は原子から成る。これは化学の常識である。しかし、一般の量子化学計算において、分子は原子核とこれらを取り巻く電子から成るものであり、しばしば我々の直感に沿わない。例えば、標記の構造の揺らぎとは原子を単位とする運動に基礎を置くものであり、量子化学計算の結果を直接こうした描像に焼き直すには、我々の直感に則した手法の導入が必要となる。こうした考えから、量子化学的に求められた系の全エネルギーを、構成する全ての原子および原子対に分配する新しい手法を開発した。この方法では、分子内のみならず分子間の相互作用についても、系を構成する全ての原子対に帰着して捉えることができ、その数値結果も我々の直感はもとより、分子シミュレーションで広く用いられている分子間相互作用の経験的な値ともよい一致を示すことが明かとなった。 (2)三次元空間における分布関数を動径方向と角度方向に分割することにより、3D-FFTを行わずに三次元空間における溶媒和構造を直接求めることのできる新しい手法を開発した。この方法を用いて、ベンチマーク系としてよく知られているHClおよびここから電荷を取り除いた系について、その動径分布関数を比較したところ、従来型のRISM法で現れる誤ったピークがなくなるだけでなく、これより高精度な手法として知られているPOZ法と比較しても、明らかな改善が認められることがわかった。現在、この方法は量子化学計算との結合作業も終えており、従来からのRISM-SCF法に比較してもきわめて強力であることが明らかになりつつある。
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Research Products
(6 results)