2006 Fiscal Year Annual Research Report
生体分子中の電子移動とプロトン移動の微視的理論とシミュレーション
Project/Area Number |
18031021
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
安藤 耕司 京都大学, 理学研究科, 助教授 (90281641)
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Keywords | 理論化学 / 量子動力学 / 電子移動 / プロトン輸送 / 非断熱遷移 / エネルギー変換 / 金属蛋白質 / 光反応 |
Research Abstract |
本年度は、準量子的時間依存ハートリー法の開発と水素結合構造における同位体効果への応用、代表的なブルー銅タンパク質であるプラストシアニンにおける光誘起配位子金属間電荷移動の分子動力学シミュレーション、の2テーマについて研究を行った。水素結合構造、特にその同位体効果を正しく記述するには、プロトンの量子性を適切に考慮することが不可欠である。同様に、膜タンパク質におけるプロトンポンプ輸送や、酵素触媒反応におけるプロトン移動反応を正しく取り扱うためにも、プロトンの量子力学的波束の拡がりとゼロ点エネルギーの効果を適切に取り入れる必要がある。本研究では、これらの観点について、現実的な分子モデルにも適用可能な新手法である準量子的時間依存ハートリー法を開発し、水素結合モデルにおける構造相関と同位体効果を計算し、定量的に良い結果が得られることを示した。次に、プラストシアニンについては、非経験的分子軌道計算に基づいて励起状態ポテンシャルエネルギー曲面を構築し、平衡および非平衡の分子動力学シミュレーションを実行した。特に、電子状態間遷移を記述するエネルギーギャップ座標の動力学を初めて計算し、銅イオンに配位したシステインと二つのヒスチジンの構造変化との動的結合の様相を明らかにした。非平衡動力学シミュレーションでは、電荷移動励起状態から銅イオン3d電子の配位子場励起状態へのポテンシャル交差が約70フェムト秒の高速で起こり、システイン配位の切断に続くヒスチジン残基の反跳運動がコヒーレントな振動を示し、その後は熱的なランダム運動によって非断熱遷移が起こるという描像を新たに提示した。
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Research Products
(1 results)