2007 Fiscal Year Annual Research Report
生体分子中の電子移動とプロトン移動の微視的理論とシミュレーション
Project/Area Number |
18031021
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
安藤 耕司 Kyoto University, 大学院・理学研究科, 准教授 (90281641)
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Keywords | 生体分子 / エネルギー変換 / 電子移動 / 励起状態ダイナミクス / プロトン輸送 / 理論化学 |
Research Abstract |
タイプIに属する電子伝達銅タンパク質であるプラストシアニンについて、非経験的分子軌道計算と分子動力学シミュレーションを組み合わせた微視的解析を行い、近年報告された超高速ポンプ・プローブ分光と共鳴ラマン散乱の実験結果と比較しながら議論した。結果を要約すると、(1)Cu-S(Cys)結合伸縮、N(His)-Cu-N(His)変角振動、およびS(Cys)-Cu-N(His)2ピラミッド構造の屈曲運動の3つの分子運動が、基底状態から配位子金属間電荷移動(LMCT)励起状態への励起に最も強く結合する。(2)LMCT状態と基底状態の間のエネルギーギャップは、平均において約8kcal/molよりも近付くことはなく、光励起状態からの失活は、まずd-d励起状態とその下の第一励起状態を経てから、基底状態へ緩和すると予想される。これは、超高速ポンプ・プローブ分光から示唆された結果と整合している。(3)上記の第一回目のポテンシャル交差の後、約500フェムト秒でコヒーレントな回帰が見られ、再度交差点に近づく。この動力学的振舞いは、Cu-S(Cys)結合の開裂とそれに伴うN(His)-Cu-N(His)構造の反作用的応答と最もよく相関する。(4)約500フェムト秒以後は、エネルギーギャップの動力学は乱雑化され、統計平均後には平坦な経時変化を示す。しかしながら、平均化される前の個々の軌道には、ポテンシャル交差を引き起すに十分な大きさの揺らぎが見られる。すなわち、この時間領域では、ランダムな熱的揺らぎによって失活が起こることが示唆される。
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Research Products
(2 results)