2006 Fiscal Year Annual Research Report
生体保護物質としての糖類の水和ダイナミクスにおよぼす影響の研究
Project/Area Number |
18031023
|
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
長澤 裕 大阪大学, 基礎工学研究科, 助教授 (50294161)
|
Keywords | 水和 / 蛍光相関分光 / 水素結合 / トレハロース |
Research Abstract |
通常、蛋白質や脂質膜等の生体物質は、液体である水が存在しないと、その高次構造を保持することができない。ところが、ある種の生物は極度の乾燥や凍結にも耐えることができ、その際、トレハロース等の糖類が水の代替物貿として作用することが知られている。これらの糖類は分子レベルで生体物質の揺らぎを抑制していると考えられ、分子運動に糖が与える影響は非常に興味深い。そこで、蛍光相関分光法(FCS)により、微小空間内の分子の並進拡散運動を測定した。 水溶液の糖濃度を上昇させると、糖水溶液中の蛍光性分子の励起三重項(T_1)状態の寿命τ_<trp>が長くなることを見出した。直鎖アルコール溶液中でも同様な実験を行ったが、T_1状態は観測されずτ_<trp>は糖水溶液およそ50wt%の濃度に相当するが、T_1状態はほとんど観測できなかった。T_1状態は大気中の酸素によって消光される。よって、高濃度の糖水溶液中でT_1状態の寿命が延びる原因としては、酸素濃度もしくは酸素分子の拡散速度の低下が考えられる。溶存酸素計による測定の結果,トレハロース水溶液について、25℃,1013mBarの時、0wt%、30wt%、58wt%の濃度でそれぞれ、7.1、7.1、6.7mg/lという値を得ており、濃度変化はほとんどない。よって、T_1状態の寿命が延びる原因は酸素分子の拡散速度の低下によると結論された。 糖分子と酸素分子が何か特別な相互作用をするとは考えにくいので、その原因は溶液中の自由体積の低下といったような物理的なものが考えられる。クリプトビオシス時にその生物の生命機能は完全に停止しているので、水や酸素等の循環を遮断したほうが、生体物質の長期保存には有利なのかも知れない。
|
Research Products
(1 results)