2006 Fiscal Year Annual Research Report
溶媒からエネルギーを取り込んでエントロピー的駆動力を利用する分子モーター
Project/Area Number |
18031033
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Research Institution | Chuo University |
Principal Investigator |
宗行 英朗 中央大学, 理工学部, 助教授 (80219865)
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Keywords | 一分子計測 / 生物物理 / 分子モーター / 熱揺らぎ / 活性化エネルギー |
Research Abstract |
分子モーターにとって溶媒は単なる環境ではなく自由エネルギーのエントロピー項に対応する部分を供給する重要な役割を持つことが最近ようやく認識され始めた.実際にATPの結合一つをとってみても,その反応には活性化エネルギーとして溶媒から吸収する熱エネルギーが重要な役割を果たし,弱い結合状態と解離状態の平衡からトルクを発生する強い結合へ移行することが考えられる.ただし,回転分子モーターであるF_1-ATPaseのATP結合待ちのdwell timeはきれいな指数型の分布を示し,中間状態は認められない.しかし,上記のように熱揺らぎによる反応の活性化が重要であるならば,温度を下げたり,逆方向に外部トルクを加えれば,このヒストグラムの形が変わるかも知れない. そこで,本研究では誘電泳動法により回転トルクを外部から与えて,そのときのF_1-ATPaseの回転の挙動を調べることにした.装置は,桐蔭横浜大学の工藤成史博士の指導によってくみ上げることができ,現在実験に用いる溶液条件の検討を経て予備実験から本実験に移行するところである.回転実験に通常用いられている変異体HC95を用いた予備実験では,外部トルクにより回転の平均速度は,ほぼ直線的に変化したが,回転がほぼ停止する以上の外部トルクが加わっても,逆回転はせずに踏みとどまる傾向が見られた.外部トルク存在下にステップ運動が見られた場合にそのdwell time histogramを解析すると,それは単一の指数関数的な減少ではなく,ピークを持ったものになっていた.しかし,ATP濃度による変化などの詳細は未だ検討していない.また,逆回転をせずに踏みとどまった状況は,静止しているのではなく,ステップ的な前進と後退を繰り返していることが観察される場合もあった.これも非常に興味深いものであるが,詳細な検討は平成19年度の課題である.
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Research Products
(3 results)